暦物語、終物語と再放送が続いている物語シリーズの一番最初の作品。
以前、ハリウッド映画を漁っていた頃、続編が出ている最初の作品を、映画選びの一つの指標にすることで、極力ハズレを引かないようにしていましたが、化物語にもこのジンクスがバッチリ当てはまっていたようです。
暦物語も面白い、と思いましたが、化物語の比じゃなかったです。少なくとも化物語を観てから観るべきでした。
2009年7月スタート。全15話。ただし、当時、地上波放送されたのは12話まで。最初、12話が最終話かと思ってしまいましたので、尻切れとんぼ感はあるものの、かろうじて問題のない出来だな、と感じました。もちろん、15話まで観た方が良いです。
シャフト制作。のちに「まどマギ」の監督を務める新房昭之監督。監督のファンからすれば、むしろ「まどマギ」こそ、あの化物語の監督か、となるのでしょうね。この作品のインパクト、すこぶる強いです。
・ストーリー
ある事件をきっかけに怪異となった阿良々木君。怪異ゆえに怪異を見極められるようになったのか、怪異に取り憑かれた少女たちと彼は出会うようになります。
「マア、大キナオ世話モ余計ナオ節介モアリガタ迷惑モ」
「阿良々木君にされるなら、そんなに悪くないのかもしれないわ」
とヒロイン(恋人)に言われるように、少女たちの怪異を、怪異の専門家の助力を得ながら解決していきます。
登場する5人の少女に合わせて、大きく5つのストーリーに分かれているのですが、時間が連続していることと、阿良々木君とヒロインのラブストーリーが全体の基盤となっているため、暦物語と違って、15話としてのストーリー性が保たれていて、より物語にのめり込めます。
センスの良い構図が連続するカット割りがすごい。読みきれない文字情報がばんばんカットとして入ってきます。実写も入ります。人のいない街の風景が非日常を際立たせています。どうして、このシーンでこんなアニメーションを思いつくのかと感じるシーンも多々あり、天才、というか奇才なんでしょうね。それでも、後発の物語シリーズの作品に比べて、大人し目なのです。逆に、後発もこのくらいで止めておいた方が良かったのではないかとさえ思うほど、ストーリーを損なわない過度なんだけど適度な演出が印象的でした。
・作画
女性キャラが美しい。アップも綺麗。動画も自然。演出の斬新さも加わって、この画を観るためだけに円盤買っても良いとさえ思える作画です。
・音楽
物語シリーズでシナリオ毎のヒロインがOPを担当するのは最初からだったんですね。魅力的な曲が多いです。サントラもシーンをよく支えていますが、サスペリア(ゴブリン)の曲と似た感じのもあり、サスペンスにはこの単調な繰り返しが効果的なんだな、と改めて感じました。
・演技
ヒロインに斎藤千和さん、サブヒロインに堀江由衣さん、他3人の少女に花澤香菜さん、加藤英美里さん、沢城みゆきさん。ほとんどセリフのない隠れヒロインに坂本真綾さん。井口裕香さんとキタエリさんも、ほぼ次回の予告でしか出てこないなんて、今から考えると、ものすごく豪華です。当時、花澤香菜さん20歳。今でも活躍している方々の若手、中堅時代の仕事です。悪いはずがないです。
ちなみに
「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(以下、俺ガイル)(俺ガイルの方が後発)」とこの作品、似ている部分があるなあ、と感じました。
主人公が自分の存在を最底辺に位置付けてトラブルへアプローチする点、登場人物の間の小気味の良い掛け合い、ヒロインの口調。
例えば、ヒロインの主人公へのセリフ。
「ねえ、阿良々木君。阿良々木君はいつも通り阿良々木君のやり方を貫けばいいわ。私はいつも通り私のやり方を貫く。」
さらに、別のシーン、主人公が怪異と対峙しているところに登場したヒロインの言葉、
「どうせ、あなたのことだから、自分が死ねば、全てが解決するとか、間抜けなことを考えていたのじゃないかしら?」
これら、俺ガイルのヒロインの口から出たとしても不自然ではないんじゃないかと。
もっとも、この続きは、俺ガイルのヒロインには(今のところ決して)言えないでしょうけどね。
「冗談じゃないわよ。阿良々木君が死んだら、私はどんな手を使っても神原を殺すに決まっているじゃない。阿良々木君、私を殺人犯にするつもり?」
性格はお互いひねくれているのに、化物語がすっきり面白いのは、主人公とヒロインの関係がシンプルでハッキリした設定になっているから、でしょうか。
ところで
ブルーレイ・DVDの特典にオーディオ・コメンタリーがついていますが、よくある出演者によるフリートーク風なものと異なり、出演キャラクターによるきちんと作られたコメントが聞けます。どちらが良いかは人それぞれですが、自分はこのパターン、もう一本違う化物語が聞ける感じがして、とても好きです。ドラマCDがおまけについている感じです。フリートークもそれはそれで楽しいのですが、制作が気を配って投資して作ってくれてるところに感動します。
とはいえ、八九寺真宵の暴走を評して
「構成作家の存在を感じさせない自由な進行だね」by羽川翼
てな感じで、面白いですよ。






