2018年8月26日日曜日

映画 聲の形

聲の形 総合:☆☆☆

原作との比較になるので少し辛めです。「聲の形」ファンなので、結局BDに焼いて残しておくことになるから、実質は☆4相当です。

漫画原作。
元々は少年マガジン新人賞入選を果たした短編漫画でしたが、聴覚障害者に対するいじめがテーマになっていたため、掲載が見送られた曰く付きの漫画です。法務部、弁護士、全日本ろうあ連盟と協議を重ねた結果、3年経ってようやく雑誌掲載され、その後、リメイク版、続いて連載版(全7巻)が発表されました。漫画は完結しています。
自分は全バージョン、既読です。連載版の評価は、文句なく☆5です。

・ストーリー
ある小学校に転入してきた女の子は聴覚障害者でした。自己紹介で、ランドセルから、ノートを引っ張り出し、クラスのみんなに見せます。
「はじめまして。西宮硝子といいます。」
「わたしは皆さんとこのノートを通して仲良くなりたいと思っています。」
「どうか わたしと話すときは このノートに おねがいします。」
「耳が聞こえません」
最初は手助けをしていた周りの子達も、合唱で足を引っ張られたりすることによって、徐々に彼女を敬遠しだします。「彼女とクラスメイトとの不協和音」「彼女と社会との不協和音」そして、不協和音が爆発したことにより、中心となっていじめていた少年に矛先が向いた後の、彼の性格に及ぼした影響と、それによる彼の後悔と再生の物語です。

・演出
聴覚障害者がヒロインですが、そもそも、この作品(原作)のテーマは、耳が聞こえる聞こえないに関わらず、「他人に自分の気持ちを伝えることの難しさ」「他人を理解することの難しさ」です。
この観点から見てみると、どうしても、連載版に比べると、尺が短すぎるので、それぞれのエピソードの深堀ができません。そのため、強烈なメッセージを持たせることができないでいます。なぜその結果になったのか、理解はできても納得するところまで至らないのが、この映画の難点です。
深掘りができていない例えとして、ストーリのところで書いた前半部分だけ取って見ても
− 徐々にクラスのみんなが彼女を敬遠しだす、背景となるエピソードが少ない。
− いじめていた少年の地獄を描ききれていないので、彼女の気持ちになって後悔に至る理由が薄い。
さらに、映画のキャッチコピーである「君に生きるのを手伝って欲しい」が、なぜヒロインの心を打つのかが描ききれていない。
などがあります。
また、オリジナル版、リメイク版ともに短編なので、確かに語りつくせないところもあるのですが、それでも、
「他人に自分の気持ちを伝えることの難しさ」「他人を理解することの難しさ」
という軸がぶれていない(その上、オリジナル版では、これらを放棄した大人に対する反発まで描いている)ので訴求力があるのですが、映画ではこの軸から
「君に生きるのを手伝って欲しい」
にいつの間にかすり替わっていくので、妙なねじれ、彼中心のご都合的なものに感じるのです。原作がこのセリフで伝えたかった事は、そういうものではなかったはずです。

・作画
劇場用アニメですから、可もなく不可もなく、でしょうか。

・音楽
まあまあ。

・演技
悠木碧さんも相変わらず、なんですが、とにかく、この作品では聴覚障害者を演じた早見沙織さんの演技に尽きるのではないでしょうか。クライマックスでは視聴者に若干聞き取りやすい発声をされていますが、この部分は演出として仕方ないでしょう。

漫画のメッセージ性、考え抜かれた伏線の張り方が凄いので、これはちょっと厳しかったかもですね。

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