2018年8月30日木曜日

秒速5センチメートル

秒速5センチメートル        総合:☆☆☆☆☆

2007年公開。新海誠監督。アニメ映画。
63分を短編3話の連作で綴っています。短編でも無理のないストーリ展開です。

・ストーリー
「桜花抄」
親の都合で転校を繰り返していた男の子と女の子が東京の小学校でたまたま一緒になります。二人は出会いと離別の繰り返しに慣れていましたが、同じように体が弱く、同じような環境で育った二人は似たような心を持っていて、似たようなことに興味がありました。自然とお互いを意識するようになった二人は、クラスメイトにからかわれても、その絆は変わらないでいました。しかし、二人の変わらぬ環境は、結局、二人をずっとそばに居させてはくれないのでした。

「コスモナウト」
幼い二人が自分たちで運命を変えられるようになるまでには、あまりにも長い時間が必要なことを二人は感じ取っていました。二人の距離も、二人でいられた時間も、時を経るうちにどんどん離れていきますが、彼の気持ちは、あの頃に置いてきたままでした。高校生になった彼のそばには5年間、彼に思いを寄せる女の子がいました。彼女は彼が心をどこかに置き忘れてきたことに気づいています。そして、いつの間にか彼女の時間も止まったままになるのでした。

「秒速5センチメートル」
大人になった3人。周りの人間関係も変わっていきます。乗り越え一歩を踏み出せたのか、心はそのままに時の流れに身を任せるのか、それとも、その場にとどまるのか。3人のこれからが、主題歌を背景にスライドショーのように流れていきます。

・演出
桜が散る、雪が降る。物語を彩る美しい背景が、切なさを一層際立たせています。構図、カメラワーク、光の表現も芸術的です。リアル以上にリアルな描写なので、実写で撮るにはCGでも使わないと上手く見せられないだろうなと思います。アニメを表現方法に使った演出で良かったと思います。散りばめられた数値、言葉の選択、シナリオもスッと入ってくる自然なものです。

・作画
細部にわたって、徹底してリアルに描き込まれた原画、動画、背景。好感の持てるキャラクターの絵柄。あらを探しても仕方ないでしょう。

・音楽
素晴らしい、です。とても心に残る、サントラと主題歌です。

・演技
限られた中、丁寧なキャスティングをされたのではないかな、と感じました。

そう、絶対そこにあるはずないのに、なぜか探してしまいます。奇跡を探したくなりますが奇跡は起きないから奇跡なのかもしれません。

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