2018年6月9日土曜日

BEATLESS(2クール終了加筆)

BEATLESS  総合:☆☆☆

期待度が高かったこともあり、その落差に戸惑っています。この2クールでも終了せず、ファイナルステージにより完結する模様です。あくまで中間感想の域を出ませんが、ファイナルステージも見る気満々ですので、☆3に格上げしました。
理屈っぽさは好みです。この設定を描き切るには、確かに2クールでは足りなかったようです。小説が原作。原作は未読。ひょっとすると原作は面白いのかも。

・ストーリー
AIが人を超えた未来を描くSFアニメ。AIと人との関係を一貫したテーマとして、迫力あるアクションとSFらしい理屈っぽさを程よく掛け合わせたストーリーになっています。
AIにも個性があり、それぞれの行動原理をもとに、それぞれが生存をかけて、人と関わっていきます。据え置き型の超高度AIが多数を占めていた中、進化した女性型アンドロイドAI(作中ではhIEと呼んでいます)5体が、人間社会の中に解き放たれ、自由に行動を始めることで巻き起こる混乱と構築の物語です。
その中でも、人の形をしている事によって自然発生するアナログハックを人との信頼関係に利用し、単純にアナログハックすることで人を管理下に治めるのではなく、あくまで人の道具として、ゆらぎの部分の決定、未来の設計は人に委ね、人の描く未来を実現していく個体とその対象となった人間との物語です。ただ、人とAIの未来を構築するために一個人の未来図をベースとする手法は、AIとして賢いのでしょうか。AIが理想と思える人物を探し当てた結果のような流れですが、このAIは人全体を掌握する能力を持っているので、むしろ人全体の総意を参考にすべきとも思うのです。このあたりの人間的な振る舞いが今後の伏線になっているのかもしれません。
据え置き型含めその他のAIもそれぞれが描く未来の設計図に従い行動するのですが、それは、あくまで人間の意志や人間の世界を第一義に置いて構築されており、人とAIとの関係性の枠内に止まります。人と自壊的交戦に及ぶ赤いhIEも三鷹でテロを起こす緑のhIEもこの原則からは外れません。独立した自我を目覚めさせ、人と完全に対立し人の抹消を選択するAI(例えば、20世紀宇宙の旅のHAL9000やターミネータのスカイネット)のような道具を逸脱した存在にAIをさせないこと、これがこのアニメのSF世界観の根底をなしています。色々な意味で惑わされそうになりますが、女性型アンドロイドなのにアシモフのロボット三原則を逸脱してしまっているのは、AIというロボットの進化系ゆえと納得できますし、それでも三原則を少し拡大した枠組みにとどめて人との関係性重視をAIに課している点、かなり王道のSF作品で、この作品の魅力の一つです。
hIE側に視点を移すと、「わたしに心はありません」と言ってはいますが、いやいや、人の心を持って生まれてきたのに身体が機械だったことの悲劇を描いているようにみえます。未来を舞台にしたピノキオ物語。身体能力こそ、人を遥かに凌駕しているものの、hIEの思考と彼女らのとる行動は人のとる行動と変わらないのですから。
そこに、永遠のテーマ「異種族間恋愛」が追加されているのも、この作品の魅力にプラスされています。ただ、hIE 5体の中でもヒロインのhIEはブレードランナーのレプリカント・レイチェルやある意味その他のhIEに比べ、合理的思考が強すぎ、行動が打算によりなされているようにみえ、現段階までの話の中では、彼女の心のうちが読みきれないため、彼女を本当に「信頼」していいのかの不安定さを最終話でも謎として残し続けています。ヒロインは、人間的な心を持ちえたのか、心を持ったとしても、人を利用していることによる罪悪感を感じ始めているだけなのか、ピノキオ物語なのかそうでないのか、ファイナルステージで回収してくれることを期待しています。

・演出・作画・演技
ストーリーが傑作の域に達したとしてもなお、以下から、このアニメの総合的な感想自体は大きく変わらないと考えましたので、前回の公開では☆2とし、まだ中途段階ですが、感想をアップしてしまおう、という気持ちになりましたが、お詫びして☆3に訂正します。やはり、SF的ストーリーの魅力と、hIEの魅力には抗えませんでした。
− メインの人側の登場人物たちの演技が上手くない。5体のhIEの声優さんの演技は非常に良いので、人側の足の引っ張り方が残念至極でなりません。
− メインの人側の登場人物たちに感情移入ができません。思考がよく理解できないのです。むしろhIEに思考や行動に共感します。
− 裏切って、後悔して、全てを取り戻すためにリセットし簡単に関係修復。テンプレにしても分かり易すぎるような演出展開は、折角の骨太SF作品には似つかわしくないかと思います。
− 原画の不安定さも動画の不自然さも割と目立ちます。

設定、お話は好きな分野なので、アニメ本来の表現を損なわない形で底上げしてくれれば良かったのにな、と思います。

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