40年の歴史を持つ日本SF大賞の対象にもなりそうな王道のSFです。ちなみに、日本SF大賞を取れた漫画は大友克洋さんの「童夢」が最初。だいぶ経ってからSF漫画界の巨匠・萩尾望都さんの「バルバラ異界」、「WOMBS」の白井弓子さん。アニメでは押井守監督の「イノセンス」一つだけだったはず。
2019年のマンガ大賞受賞作。マンガ大賞は、あまり世間に知られていない(巻数が少ない)漫画の中から秀逸なものを紹介する意味合いもある賞なのですが、製作は先見の明がありましたねー。完結している漫画ですから、アニメとしてもきちんとまとまっており、一本のドラマとしてしっかり楽しむことができます。
2019年7月スタート。全12話。30分枠アニメ。ただし、最終回の1話は1時間枠。
・ストーリー
未来に生きる人類の物語。そこでは宇宙への進出が実現しており、ケアード高校の高校生8人とその中の一人の妹を含む総勢9名のB5班は、大自然を生徒たちだけで体験するため、5光年離れた惑星マクパへキャンプに出発した。しかし、キャンプを楽しもうとした彼らだったが、突如現れた謎の物体に全員が吸い込まれ、なんと5012光年離れた空間に飛ばされてしまう。一緒に飛ばされた宇宙船は使うことができたが、保存食料などから、帰還は絶望的と思われた。また、この出来事が人為的なトラブルであることも発覚し、9人の中にその実行犯がいる可能性が高いこともわかった。刺客を抱えたまま、彼らの故郷へ辿り着くための知恵と勇気と、そして友情が試されていく物語。
若干のネタバレになりますが、
ノーベル文学賞受賞者カズオ・イシグロの「わたしを離さないで(これの映画も超おすすめです)」や、萩尾望都と並ぶ大家・竹宮惠子の「11人いる(これもおすすめ)」など、SFの王道テーマを複雑に絡み合わせながら、一本の糸としてまとめきっているストーリーは素晴らしいと思います。ただし、絶滅危惧種に認定されかねないほど、人類が相当数に絞られている状況でないと、なかなかこうはならないんじゃないかな、と思われる設定が、惜しいっちゃあ惜しいです。
・演出
閉鎖空間での疑心暗鬼と友情の交錯を、明るい雰囲気で進行させる演出はとても良かったです。原作にどの程度忠実なのかはわからないのですが、アニメ化して良かったと言えると感じました。多分に原作の力なのかと察しているのですが、多様で個性的なメンバーのおかげでもあり、一人一人のエピソードを織り交ぜる展開は王道ではあるものの、誰が実行犯なのかという謎と組み合わされているため、とても自然な形で「みんなで帰還する」というテーマに取り込めているので、冗長にならずに済んでいます。
・作画
テレビアニメとしてはかなり良い方だと思います。キャラもしっかり描き分けられているし、円盤買ってもそう後悔はしないかな、と思います。
・音楽
劇伴音楽も物語の邪魔をせず、総合芸術に一役しっかり買っています。
・演技
メインの9人もサブのみんなも相当豪華です。特に9人のメインキャラの声優さんはキャラにバッチリあってましたねえ。さすがです。9人のメインキャラをしっかりその個性にあわせてくる声優さんたちはすごいです。影のある悪役をやらせると最高な内山昂輝さんとか、中性的な役回りもこなした松田利冴さんなど最近特に気になっている方。脇に回っても存在感のある美しい声の早見沙織さん。すかした天才イケメン武内駿輔さん、七色の声の黒沢ともよさん、かわいいとおっさん口調の二役をこなした木野日菜さん、爽やかイケメンといえばの島崎信長さん。そしてヒロインの水瀬いのりさんはこのアニメでの演じ方は素直な感じで好みでしたし、何より主人公・細谷佳正さんの善人・前向き・熱血漢でいて照れ屋の演技が、このアニメのカラーを決めたようにさえ思えました。「刀語」の鑢七花役を飄々淡々とした喋り方で演じられていたのは、やっぱり全体を通しての構成だったんだな、と納得させてくれました。
SFだけど、ミステリーなんでねー。何回も観るものでもないインパクトのあるストーリーが、円盤までは、と思っちゃうのが、強いて挙げれば欠点です。
0 件のコメント:
コメントを投稿