プリンセス・プリンシパル 総合:☆☆☆☆☆
オリジナルアニメ。
2017年7月スタート。全12話。
絵柄は可愛いですが、かなりのハードボイルドです。大人が観ても非常に楽しめるアニメですので、絵柄に惑わされないように^^
ただし、というか、ゆえに、というか、海外では中学生以下への視聴制限がかかっています。リュック・ベッソン監督映画「レオン」完全版では、子供が暗殺の手伝いをする描写が問題となり、ごっそりと問題シーンを削った劇場版が作られたわけですが、匹敵するほどのバイオレンスが含まれていることをご承知置きください。
・ストーリー
19世紀末のIF世界が舞台。イギリスをモデルにしたアルビオン王国はケーバーライト(浮遊石)を独占しローマ帝国以来の覇権を手にしたのだが、革命により王国と共和国に分離。ロンドンは壁を隔てて東西に分かれ、世界各国のスパイ合戦が繰り広げられる都市と化していた。王国側のロンドンに共和国側の腕利きスパイが送り込まれた。彼女はアンジェ。黒蜥蜴星から来たとカバー(作戦遂行のために適当と思われる設定・役割になりきること)からして欺瞞の塊のような存在だったが、王国の王位継承権第4位の王女と瓜二つを利用し、チェンジリング作戦(王女とすり替わる)を立案、実行のために王女へ接近したのだった。しかし、彼女には秘密があった。嘘に嘘を重ねて塗り固められたアンジェとチームの仲間たち5人(ドロシー、アンジェ、プリンセス、ベアトリス、チセ)が織りなす、スパイの日常の物語。
スパイ=嘘つきの設定を前面に出すことによって、「物語シリーズ・恋物語」などで登場する詐欺師・貝木泥舟のように、話すことのどこまでが本当なのかを見極めながら観ることになるのが楽しいアニメです。1話、アンジェの「冗談じゃないわ。ただの嘘よ」「保険よ」、クライマックスでの「いいえ。いいえ。いいえ。いいえ。」などのセリフがストーリーを奥深くしていました。3話で見極め、どころか1話を観ただけで、続きを見ない選択肢が無くなった瞬間です。
・演出
あまり使いたくない諺なんですが「山椒は小粒でピリリと辛い」系の単発エピソードを時系列を操作しながら観る者を揺さぶる演出が素晴らしかったです。それぞれのエピソードも粒揃いで単独で観てもとても面白いのに、テーマとして流れる「アンジェとプリンセスの友情物語」「ヒロイン・アンジェの心の壁の物語」そして、実はこの人こそが真のヒロインと言っても良い「プリンセスの覚悟の物語」が根幹としてしっかり流れているので、ストーリーがとても綺麗にまとまっています。
また、初回放映時とソフト収録時(2019年再放送はこちらと同じ)の順番は異なるのですが、ソフト収録順の方がより練られている感じで良かったです。
ただし、すっきり終わったアニメではありません。きっちり決着がつくことを望まれる方にはオススメしづらいですし、通常なら自分も終わってないことを理由に☆の数を減らし兼ねないのですが、このアニメに関しては、美しい余韻が感じられ、寧ろ、この終わり方をしたことに好意的です。なので、続編、本当に作るのかわかりませんが、この感じが消えてしまうような続編になるくらいなら、作らないでいてくれても良いな、とさえ思います。
さて、5人とも魅力的なのですが、日本人代表として先進国で過ごすちょっとボケも入ったチセの見せ方が自分的にはお気に入りです。ピカピカに光った竹の切り口のようなモノに水が溜まる。鹿威しの尖端だよなこれ?と訝しげに見ていると、鹿威しにあるまじき響きがw。ただ、これも日本仏教的な音なので、風流ではない、とは言い切れない趣があり、さらにそれを2回鳴らす演出も素晴らしかったな、と。このようなメインストリームのシリアスさを損なうことがない、逆に効果的に際立たせるちょっと笑ってしまうようなエピソードを挟む演出が粋でした。
・作画
アクションも迫力がありますし、産業革命後の雨のロンドンらしい暗い色調も良く、美術、デザインもしっかり描き込まれていて、劇場用には及びませんが、テレビアニメとしてはかなり優秀だと思います。円盤買って、作画で後悔はしないはずです。
オープニング。落ちる時の5人の表情の違いがいいです。さすがの演出。
・音楽
梶浦由記さんらしい楽曲なんですが、「まどマギ」と同様、中身が濃いので、梶浦節でちょうど良かったと思います。ファンならサントラ買っても良いかもしれません。OP/EDは繰り返し見ても飛ばすことはなく、特にエンディングが良かったです。最近、英語の歌について、声優さんが歌わないアニメには違和感あるなあと、ちょっとがっかりする傾向にあったのですが、ネイティブが聞くとどうなのかは分からないものの、自分としては、声優さんの英語の歌声で十分上手だな、と思っています。
・演技
キャスティングがとっても良かったですね。制作、ナイスです。
声優さんとしてエンドロールに名前が出ている時点で、すごいことだとは思うのですが、それでも失礼ながら、スーパースター声優さんで編成されてはいないにも関わらず、全く不安の無い演技で、このアニメを総合芸術として完成させたのは、キャストの皆さんの演技力あったればこそでした。
5人の主要キャラには、関根明良さん、大地葉さん、影山灯さん、古木のぞみさん、残念ながら引退された今村彩夏さん。メインキャラは最早この方々でなくてはならなくなりました。続編がなくても良いかもと思わせるのは、キャストが揃わないかもとの不安も大きく関わっております^^
オススメです。
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