荒野のコトブキ飛行隊 総合:☆☆☆☆
戦闘機と少女をモチーフにしたオリジナルアニメ。
2019年1月スタート。全12話。
同じようなモチーフでは同じ冬アニメとして「ガーリー・エアフォース」もありましたが、「ガーリー・エアフォース」は従来型のアニメ制作で、よりSF色が強くボーイ・ミーツ・ガール要素がふんだんなのに対し、やはりSFチックとはいえ既視感のある異世界を舞台にし、飛ぶ意義を前面に押し出し、社会性の強い当アニメとはストーリ展開も趣もことにしています。自分はこちらのアニメの方に惹かれました。
・ストーリー
空輸を生業とするオウニ商会。空賊から守るため、なぜか太平洋戦争中の陸軍飛行隊主力機であった隼で編成された女性ばかりの凄腕パイロットからなる用心棒集団コトブキ飛行隊は、オウニ商会に雇われていた。彼女たちは、最初は普通に積荷を守っていたが、いつの間にか政治に巻き込まれ、そして、世界の成り立ちの謎をめぐる利権争いにまで巻き込まれていくことになる。
・演出
シリーズ構成・一部脚本は横手美智子さん。安定して不思議のない言葉でストーリーを紡いでくれます。監督はガルパンの水島努さん。SHIROBAKOコンビですね。作画は置いておいて、物語も演出もテンポもとてもよく、SF基調とはいえ新しい国が興る黎明期の身近な出来事の積み重ねを、オリジナリティあるストーリーでスマートに見せてくれます。イラっとさせる振る舞いのキャラも多いのですが、殺意を抱くほどでもなく、なんとなく、個性的な連中が織りなす奇妙な開拓史を見ている感じになります。飛行船やレシプロ機、そして点在する西部の田舎町風の村、近代化してはいるが狭い土地に広がる都市が、奇妙な世界観を作り上げていて、設定のうまさを感じます。
・作画
フルCGというわけではなく、なんか中途半端。まさに発展途上。キャラを3DCGにして人形劇と言われないようにするのはまだまだ大変なようです。あの押井守(この人だけは攻殻機動隊V2.0で詐欺られたwので呼び捨てですw)の映画でさえ、イノセンスではキャラだけを2次元にし、3Dの舞台で泳がせる事で成功させましたし、意地で作った一部3次元キャラの攻殻機動隊V2.0は金返せ状態だったわけで、テレビアニメで、現時点で、これ以上を要求するのは、多分酷です。
ちょっと脱線しますが、むしろ逆にセル画アニメのアニメーションがかなり劣化していませんか?3DCGの進歩とは反対方向に進んでいます。世代交代はまちがいない、と自分は思っています。そして、3DCGでの作画について、キャラ部分だけを論って評価するのは、片手落ちってもんです。
レシプロ機の動きは素晴らしいです。手に汗握るし、俺最強と違い、自分がいつ落とされてもおかしくない、ちょっとしたスリルを体感できる表現をしています。操縦席に直撃弾が少なく、落とされても生還できる事が多いので、最終的な緊張感はあまりないのですが、子供も見るアニメですから、このくらいのゆるさでも、自分は許せます。許せないんでしたら、第二次世界大戦のドキュメンタリー映像をお勧めします。それでも、特攻隊の映像でさえも、きっと、自分を含めた今の人たちに本当の恐怖を与えることはできないでしょう。片翼破壊され、ひらひらと舞うように落ちていく戦闘機に高射砲が追い打ちをかけて蜂の巣にしています。パラシュートなんて開きません。特攻ですから背負ってるわけ、ありません。艦船を目前にして、集中砲火で粉砕され、艦まで届かず水しぶきを上げて水中に消える戦闘機。それを見て、身震い、できますか?低空をまっすぐ突っ込んで艦橋に爆煙を挙げ爆発して消えていく戦闘機を見て、すげー、やったー。と、きっと思うはずです。つまり、テレビ画面を通して遠目で戦闘シーンを見せる手法では、命の重さを表現しきるのには限界があり、コトブキだけを槍玉にあげるのは、いかがなものでしょうか。被弾した際の一人称視点での危機迫る表現、コトブキは善戦した方だと、自分は思います。ゴブリンスレイヤーが割とアドレナリン噴出の命のやり取りを実感できる演出だったのは、白兵戦だったからかもしれませんね。銃や遠隔で敵を倒す武器では何か人を殺すということを実感しにくいのかもしれません。
もちろん、セル画アニメでできる今までのアニメならではの迫力アクションとは方向性が異なっています。いい意味でも悪い意味でもリアルすぎるのです。そして、このリアルすぎる作画のせいで、命のやり取りをしている緊張感が足りない、というコメントがついてしまうのです。これ逆説的に、作画のリアルさを証明していることになります。
また、この後に及んで、荒野のコトブキ飛行隊をスケープゴートにして、命のやり取りを軽く扱っている、なんて突拍子もない方向での批判はやめてほしいものです。これ言っちゃうと、多くのアニメ、多くの漫画、多くの小説、そして、すべてのフィクションを否定しているということに気づいてほしいものです。まさに天つばものです。それもこれもコトブキ飛行隊のレシプロ機の作画があまりにリアルすぎるから、なんですがね。
もちろん、リアルな描写だけど、アニメですから演出は必ずしもリアルではないですよ?何百もの戦闘機がこれだけ狭い空域で乱戦するなんて、リアルでは、ない、でしょう。特別な戦闘機の特別な挙動も、障害物の間を曲芸師だってできないような軽業ですり抜けるのも、アニメならではの演出です。別にセル画なら許せるでしょ?でもコトブキでは許されない。なぜでしょう。リアルにすぎるからです。でもリアルでありながらも、ちょっとありえない演出をしたことにより、自分はコトブキ飛行隊がアニメーションであることを肯定します。
キャラが可愛くない、というコメントもあるようです。浮世絵師が描く春画を見て興奮する現代人は少ないのでは?当時の浮世絵師に謝って!w それに比べれば、十分に可愛いキャラだと思いますけどねえ。髪型と色だけ変えた一般的な漫画やセルアニメのキャラに二次元萌えするのは結構ですが、コトブキ飛行隊のキャラの魅力を全否定するのは、ひいきの引き倒しだと、自分は思います。髪型変えた両みゆきと南の見分け、つくんだろうねえ、皆さんw 今期あだち充さんのMIXがアニメで始まりますが、もう、みゆきに萌えているというより、あだち充さんの描く女性全員に萌えているっていう状態であることに気づいていなかったりしませんか、て、まさかねえw せめて違和感を感じませんか、ご一緒にw
・演技
ハイスコアガールでは「もが〜」しか言ってなかったけど、主役は主役。抜擢されたのには訳がある。テンポの良い掛け合いができるキリエ役・鈴代紗弓さん、上手でした。他の飛行隊の隊員は若干テンプレっぽい感じでしたが、その中で、しっかり特徴を捉え、きちんとキャラ分けできるように演じていたので、安心して見ていられました。飛行隊を囲む周りの人たちも良かったです。
・音楽
牧歌的で好き嫌いは分かれるかも。自分はアメリカンカントリーには今ひとつ馴染めないので、そんなに好きな方面の曲調ではありませんでした。でもエンディングの「翼を持つ者たち」はとても良かったです。ウォークマンに入れてあります。
いやあ、なんか、作画で熱く語りすぎましたが、ひょっとして、水島・横手コンビに砲火が集中してるのかな?w
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