2018年6月30日土曜日

七つの大罪 戒めの復活

七つの大罪 戒めの復活    総合:☆☆☆☆

現在進行形の漫画が原作です。歴史のある少年漫画雑誌に長年連載されているだけあり、いかにもの少年漫画。このアニメでは2クール使って、漫画の途中のエピソード、十戒との緒戦を描いています。
前作もあり、映画とはいえ、次作の制作も決まっている、現在進行形の漫画原作アニメを評価するのは避けたいところなのですが、この作品に限っては、「戒めの復活」だけでも十分楽しめる作品だと思います。少年漫画の破天荒で爽快な物語が観たいのなら、お勧めできるかと。
前作を背景としてうまく取り込んでいる、次作につなげるぞつなげるぞという感じがなく、淡々と現状残されている課題を前に、前へ進んでいこうという決起で終わらせているエンディングが、消化不良をあまりおこさせない要因かと思われます。

・ストーリー
リオネス王国を救った英雄七つの大罪の後日譚。新たに世界に脅威をもたらす十戒の封印が解けたことにより、これを鎮めるために再び立ち上がった七つの大罪の冒険活劇です。ヒーロー・メリオダスと前世からの恋人・エリザベスとのラブストーリーも、まさに王道少年漫画、という感じです。

・演出
ファンタジーですしアニメでの表現があっているのではないでしょうか。
さて、自分は昼行燈、好きなんです。普段はうだつの上がらないふりをしているが、実は最強、という日本の時代劇ではもうテンプレート以外の何物でもない、この設定が、大好きなんです。水戸黄門、遠山の金さん、必殺シリーズ、暴れん坊将軍などなど、もうこのパターンのオンパレードです。それでも面白いのはやはり日本人の特性というか美学なのではないでしょうか。なので自分は中村主水や刑事コロンボの大ファンです。
そして、この七つの大罪では「傲慢の罪・エスカノール」がこのパターンに当てはまるヒーローで、お天道様が高く上っている時はまさに無敵、その上、気持ちのいいほどの傲慢さ、俺最強好きにはたまらないのではないでしょうか。ところが、日が暮れると貧弱な酒場の店主に成り下がるこのギャップがたまりません。こういう弱点を持っているからこそ、最強ぶりが引き立つのかもしれませんね。

・作画
キャラも安定して動画も迫力があり、良いんじゃないでしょうか。

・音楽
サントラはあまり印象に残らなかったのですが、OP・EDは良かったな。

・演技
力入っているキャスティングですね。この作品でも声優さんを一人一人上げていくとキリがないので、あくまで自分的に特に気になった声優さんを泣く泣く3人に絞ると、エリザベス・雨宮天さん、ディアンヌ・悠木碧さんが相変わらずキャラの特徴に合わせた声質に変えて、かつ、クオリティを落とさないで演技しているのはさすが。マーリン・坂本真綾さんも健在です。

人は死にすぎるんですが、含めて考慮しても、そこそこ満足できるアニメではないでしょうか。

2018年6月29日金曜日

銀河英雄伝説 vs グランクレスト戦記

銀河英雄伝説 Die Neue These    総合:☆☆
グランクレスト戦記      総合:☆☆

小説が原作です。SFとファンタジーの違いはありますが、戦記ものということで。全部観はしたのですが、おすすめする理由もないので、☆は減らしています。
「銀河英雄伝説」については、ここだけ切り取って感想を書いても仕方ない風ではありますが、全部がきちんとアニメ化されたとしても、可もなく不可もなく、ダラダラとスペースオペラを楽しむことになるのだろうという気がするので、まあいいかな、と。

・ストーリー
「銀河英雄伝説」
中途半端ですね。そもそも原作からして帝国のラインハルトと同盟のヤン・ウェンリーのライバル対決が主たるテーマになっていて、設定は壮大だけど、なんだかこじんまりとしたお話です。このアニメではその一局所戦を切り出している程になっていて、壮大(と言ってもラインハルトvsヤン)な小説:銀河英雄伝説のちょっとした紹介アニメとして捉えるべき内容で終わっています。二人を英雄扱いするためのエピソードも、そんなに奇想天外な快挙だったのかなあ、と思わせてしまう内容なのが残念です。
「グランクレスト戦記」
ファンタジーです。一人の英雄とそれに仕えることになった契約魔法師が夢に向かって駆け抜ける物語です。ただ、作戦を立て戦略を練り戦術を駆使して戦うのはいいのですが、展開が慌ただしく、それぞれのエピソードの落とし所が観ていて納得できるほど語られていないのは残念でした。そもそも、初っ端の、契約魔法師が仕えることになっていた違う英雄を裏切って、出会った若き英雄と契約することになった彼女の動機も、あまり判然としなかったですし。さらに、戦術面で女を前面に押し出しているケースがあり、少しいかがわしいのも、辛いところでした。

・演出
両作品ともアニメで表現する意味はあるのではないでしょうか。
「銀河英雄伝説」
渋い親父たちの活躍は他のアニメではなかなか観られないので良いです。女性が少なく、硬派なアニメですが、せっかく出てくる女性がやけにテンプレな恋に落ちたり妾になったりで少々がっかりです。艦隊戦については、どうなんでしょう。艦の数を多く出せば良いってものではないと思いますし、艦砲射撃の応酬、シールドでの防御など、画一的で、あまり、アクションとしての見所は少ないかと。全体の動きをレーダー画像に頼って表現しているのも、あまり興味は惹かれませんでした。
「グランクレスト戦記」
23話「城壁」は目的も戦術もしっかりしていて迫力がありました。サイクロプロス対ラシック伯の戦いは特に良かったです。衣装も格好良かったですね。

・作画
「銀河英雄伝説」
細かく描き込まれて、動きも滑らか。かなり優秀だと思います。宇宙戦艦による大艦隊戦はアニメならでは、と思うのですが、技術に劣るガンダムの方が、リアルに感じたのは、なぜなんでしょうか。
「グランクレスト戦記」
若干キャラが不安定だったり、動画がぎこちなかったりするところも散見されるのですが、テレビアニメとしては上出来ではないでしょうか。男性の描きわけもうまいし、女性が綺麗なのは良いです。

・音楽
両作品ともOP/EDは良かったです。

・演技
「銀河英雄伝説」
今活躍中の男性声優さんのオールスターぶりはすごい。演技に非の打ち所はないです。
「グランクレスト戦記」
シルーカ・メレテスの鬼頭明里さん目当てに全話観たようなものです。

☆も感想も少し辛口ですが、若干相対的につけているところ、あります。自分は全部観終えてますし、特に観て失敗したというわけでもないので、これからの人が観るのを止める必要も覚えませんし、普通に楽しめる、とは思います。

2018年6月28日木曜日

ゴールデンカムイ

ゴールデンカムイ    総合:☆☆☆☆(暫定)

現在進行形の漫画が原作です。すごく評価の高い漫画で自分も既刊は全て読んでいます。途中、だれた感じがあったのですが、ここへきて初期の頃のような迫力ある展開が戻ってきました。アニメは10月から2期が始まりますので、この作品も、第1期終了のこの段階では、ちゃんとした評価にならないかと考えて(暫定)にしています。今回の12話ではまったくもって、お話が中途半端なのですが、でも、まあ、続けて観てもいいんじゃないでしょうか、というところから☆4です。

・ストーリー
日露戦争で撃たれようが何しようが死ななかった兵士・杉本佐一。不死身の杉本と恐れられる彼は、戦死した幼馴染の妻を助ける大金を手に入れるため北海道で砂金採りをしている最中、アイヌの埋蔵金の噂を耳にします。埋蔵金を隠したのが自分の父親かもしれないと知らされたアイヌの娘と、ふとしたことから出会い、一緒に埋蔵金を追う旅を始めるのですが、そこには、箱館戦争を落ち延び蝦夷共和国樹立を目指すために埋蔵金を狙う土方歳三一派、北海道で軍事独立を実行するためにこれまた埋蔵金奪取を目論む第七師団の鶴見一派の三つ巴の謀略戦とエキセントリックな暴力に、アイヌの文化がところどころ織り込まれて知識欲も満たされる、緻密でダイナミックなストーリー展開が魅力のアニメです。

・演出
アニメであってしかるべき作品ではないでしょうか。

・作画
キャラも安定して動画も迫力があり、良いんじゃないでしょうか。

・音楽
サントラはあまり印象に残らなかったのですが、OPは良かったな。

・演技
中田譲治さんのジジイの演技、大塚芳忠さんにやらせたらピカイチの狂気の演技に圧倒されてしまいますが、負けじと、杉本組の杉本・小林親弘さん、アシリパ・白石晴香さん、白石・伊藤健太郎さんも、シリアスでもギャグでも冴えた演技で、物語を楽しませてくれていました。

まあ、2期、楽しみですね。

2018年6月27日水曜日

刀使ノ巫女

刀使ノ巫女    総合:☆☆☆☆

オリジナルアニメ。2クールです。

・ストーリー
人を祟り災厄をもたらす、日本の神々の一面である荒魂。日本人は古来より神を鎮め、祓ってきましたが、このアニメでは御刀を使って鎮め祓う設定とし、御刀の神性を引き出し使うことができる少女たちを、刀使ノ巫女と呼んでいます。そして、この刀使ノ巫女と荒魂と化した宗像三女神との戦いを描いたのが本作品です。
前半では、「ある理由」から荒魂の力を使って統治を行う刀剣管理局と、刀剣管理局は荒魂に乗っ取られておりこの統治から人間を解放しようとする勢力との争いが語られ、6人のヒロインたちは後者として、刀剣管理局や荒魂と戦っていきます。
後半では、「ある理由」が明らかにされた後、その本来の目的を達成するため、6人のヒロインが中心となって、荒魂を鎮め祓うために行動していきます。
また、刀使ノ巫女の中でも鎮める力が強い柊家の血を引く十条姫和と当世随一の剣豪といえる衛藤可奈美の友情の形が全編通したテーマになっています。彼女らの母親も同じ刀使で、同じような立場で20年前に荒魂と戦った後輩先輩の友人であり、時代を超えた二代に渡る友情の物語でもあります。
サイドストーリ的な部分では、天然理心流の使い手の燕結芽ストーリーが新選組の沖田総司をなぞっている感じで、自分としてはいいな、と感じました。
後半から登場する刀使ノ巫女・内里歩が、もう少し本編に影響を与えるのかと思っていましたが、それほどでもなかったのは。。。

・演出・作画
祓具を御刀とすることで、刀使ノ巫女を剣術の使い手に仕立て上げたのは上手い演出かと。自分は門外漢なので、正確にはわからないのですが、色々な流派が登場し、剣術監修もついていることから、その立ち回りはある程度実際に即しているのだろうと思います。この立ち回りの大部分を3Dライブアニメの手法で演出しているのが特徴でしょうか。ライバルヒロイン側である燕結芽が、長船コンビを倒して、ヨロヨロ先に進んで歩くところが一番よかったかな^^
キャラが安定していないのはすごく残念です。後半になって立て直しましたが、中盤はあまり良くなかったかと。動画は3Dライブアニメ部分も含めて、迫力のある場面が多かったので、テレビアニメとしては結構良かったと思うのですが、惜しいなあ。

「これがわたしの真の一ノ太刀だっ」左・十条姫和(cv大西沙織さん)
「みごとだ」右・折神紫(cv瀬戸麻沙美さん)
「このまま私と共に隔離世の彼方へ!!」姫和
画も綺麗だったし、音楽「今この身が果てようとも」も良かったし、前半クライマックス12話の秀逸なシーンでしたね。



・音楽
サントラも場面を盛り上げてくれるし、OP・EDも良かったと思います。

・演技
リチャード・フリードマンがちょっと浮いてたけど、錚々たるメンバーがこの作品を支えています。一人一人あげているときりがないので、もう、あくまで個人的嗜好で。
6人のヒロインの中でツートップの本渡楓さんと大西沙織さんの迫力はすごかったと思います。
4人のライバルヒロイン(親衛隊)も皆さん良かったのですが、内山夕実さんが、他のアニメでの役とはちょっと変えた声質で男前な役柄をやられたのが印象に残りました。
宗像三女神には日高里菜さん、ほむほむの斎藤千和さん、キタエリさん。やっぱみなさん良かったのですが、日高里菜さんの「ゆーかーりー!!!!」が迫力満点でした。

ちなみに、荒魂の反対の側面、人に恵みを与える神の霊魂をニギミタマ(和魂)と言います。三波春夫の「お客様は神様です」はキリスト教の唯一絶対神のことを言っているのではなく、この2つの側面を持つ日本古来の八百万の神を指していると、思っています。読者の方々が客側になった時、荒魂になられんことを(^^)

2018年6月26日火曜日

東京喰種 Re: vs デビルズライン

東京喰種 Re:     総合:☆☆☆(暫定)
デビルズライン 総合:☆☆☆

現在進行形の漫画が原作です。「東京喰種 Re:」は既刊完読。「デビルズライン」は3巻まで既読。「東京喰種 Re:」は前作があること、2クール目の制作が決まっていることから、一つのアニメとして評価しづらいため、暫定の☆にしました。両作品ともに共通して、大人の世界のお話で、人に仇なす存在と、仇なす存在でありながら人側に立つ主人公の葛藤を描いています。

・ストーリー
「東京喰種 Re:」
人を食べることでしか生存できない普段は人の形をした化け物(グール)。人からグールに変えられてしまった青年。青年は人とグールの両方の特徴を持つため、希望とされる一方、その強大な力から、人との抗争を経たのちに、グールである人格を封印し(され)人側でグール討伐に加担する(グール捜査官になる)。「東京喰種 Re:」1期では、主人公が、グール捜査官になって、グールの血を取り入れた特殊部隊を率いるようになってから、しばらく経ったところから、この物語は始まる。グールとして最強の一人である自分を封印し、存在に悩み、中途半端な強さしか表に出さない結果、やはり、周りにしわ寄せを与えていくストーリー。自分的にはかなりストレスフル。フルメタル・パニックの原作者:加東招二氏が自身の作品でも似たような展開を指摘されたことがあり、その時の反論がこちら。「最近の世の中では、こういう話の展開を「鬱展開」などと呼び習わすこともあるようですが、私はこの言葉、あまり好きではありません。(自分の作品は)シリアスなだけで、別に鬱なわけじゃないし。だいたいみんな諦めてないし。(鬱展開の)物語の主人公が殻に閉じこもって何も行動せず、うじうじと悩んでいる展開が「深い話」みたいに言われるようなってしまってから、もうどれくらい立つのでしょうか。」
鬱展開(自分が最も感じたのはBLOOD+)をネガティヴに語った加東氏に共感する自分としては「東京喰種 Re:」に軽い鬱展開を感じるので、あまり楽しく観れないんですよね。
「デビルズライン」
吸血鬼を鬼と呼びその人間離れした身体能力に対抗するため、人側も鬼を使って、鬼を退治する。その鬼退治の鬼と人が恋をする永遠のテーマ「異種族間恋愛」物語。こちらの主人公も重い葛藤に苦しんでいるのですが、鬱展開とは逆に、自重を命令されている中、最強でもないのに、あれやこれやと首を突っ込みまくって暴走するので、むしろ破滅思考?躁展開と呼べるような単細胞型の思考にちょっとついていけなくなりました。好きだ好きだ言いながら、ここで出てったら永遠の別れになるかも、とわかっているのに、彼女より、なぜか禁止行動を破ることを選ぶんですよね。そこまで正義の人ではないと思うんだけど。ちなみにこの主人公も「東京喰種 Re:」の主人公同様ハーフ。

・演出
グロくてかっこいい。とは言えましょう。
「東京喰種 Re:」
の方は1段2段上にあるかな。状況がマルチに展開しているので、何が起こっているのか把握するのが大変な同作の中でも、この期の「東京喰種 Re:」は割とわかりやすい方だったのではないでしょうか。それでも、前作を知らなければピンとこない人も多いだろうし、このアニメ単体で楽しむのは努力が必要かもしれません。
「デビルズライン」
スローモーションなど、間の取り方は良かったです。

・作画
「東京喰種 Re:」の方がだいぶ上ですね。
「デビルズライン」その上、なんかホラー系の絵柄なのがちょっとな。

・音楽
サントラは普通。OP・EDは「東京喰種 Re:」の方はちょっとおしゃれ感を出しすぎで少し鼻につく感じはします。「デビルズライン」の方はまあまあ普通に良いです。

・演技
「東京喰種 Re:」
しっかりとしたキャスティングで、突っ込みどころはあまりないですね。登場人物も多いし、なかなかこの人が特にすごい、とかはなく、全体的にレベルが高い感じです。
「デビルズライン」
まあ、ヴァイオレット・エヴァーガーデンの石川由依さんですかね。心のない人形のような役回りだったヴァイオレットの演技が印象として残っているので、ここでは、やたら普通に感じてしまいますが、健気さを可愛く感じさせてくれる演技が、両方共通にあって、こういう属性のあるキャラが、この人にはあっている役柄なのかな、と思いました。


2018年6月24日日曜日

ヒナまつり

ヒナまつり    総合:☆☆☆☆☆

現在進行形の漫画が原作です。原作は1巻既読です。「月がきれい」などの☆4と比較してバランスが悪い感じもありますが、胸熱系でもなければピュアラブストーリーでもなく、自分の好みから外れる分野のアニメであることから、そして、ギャグ漫画のアニメ化としてすごく成功していると思えるところから、少し甘めに☆5です。

・ストーリー
変なカプセルに乗ってやってきた正体不明の超能力少女たちが巻き起こす、笑いと涙の物語です。ヤクザ・新田のもとに舞い降りた超能力少女・ヒナがヒロインで、ヒナとヤクザのギャップギャグがメインですが、「なに?このお世話係みたいな感じ」の普通の女子高生・瞳や、本人たちにあまり自覚はないようだけれど、討伐に派遣されたものの故あって、そのままヒロインの世界に馴染んでいく超能力少女・アンズ、あさっての方向に舞い降りたマオ(結局本編では1話しか登場せず、最終話の後半のエピローグのようなものに登場し、次作につなげられる終わり方を担わされたw)らのエピソードも楽しいです。

・演出
原作のギャグセンス、セリフのセンスを活かした演出が冴えています。アニメだから面白くなったと思える掛け合いのテンポの表現やキャスティングが素晴らしい、と感じました。

・作画
原作より可愛いし、キャラもかなり安定しているし、動画も良いしで、円盤買えるレベルではないでしょうか。

・音楽
サントラは普通。OP はとても良く、EDは好みではありませんでした。

・演技
ヒロインの声をよくこう当て(させ)たな。田中貴子さんの起用とこの方の声と喋り方が、このアニメを成功させた一つの要因じゃないでしょうか。新田役の中島ヨシキさんも若手のようなのですが、間の良いツッコミも良かったです。二人を囲む登場人物は演技派の人で固められています。アンズ役の村川梨衣さんはOP も歌っていてとても上手です。瞳役には本渡楓さん。この人の声も、よく聞けば聞き分けられるタイプの声優さんですが、声にばかり気をとられることもなく、お芝居の方に意識を向けさせてくれる演技力、ここでも健在です。あまり出番はないのですが、詩子役には日笠陽子さん、マオ役には小澤亜李さんらも出演されています。

観て損はしないと思います。

2018年6月23日土曜日

魔法少女サイト

魔法少女サイト    総合:☆☆☆

現在進行形の漫画が原作です。原作は未読です。アニメは12話でとりあえずでも終わるのかと思っていたら、完全に続編ありきの終わり方でした。この12話ではかなり消化不良になるでしょう。途中で視聴をやめる程ではないですが、他の☆3に比べれば、自分としては、かなり☆2に近い☆3です。

・ストーリー
不幸な少女たちが、あるウェブサイトにアクセスすることで、異能を手に入れ、その異能を駆使して不幸を乗り越えるために戦う物語。主役うだうだ型のストーリーです。

・演出
設定は「まどマギ」に似ていますが、ダーク度ははるかに高いです。伊藤潤二コレクションを長編にしたような雰囲気をたたえています。つのだじろう、楳図かずおにも通じる、オカルトとかホラーの分野に近い演出です。

・作画
テレビアニメとしてはこのくらいで良しとして良いのではないでしょうか。
エンディングに実写を使っています。

・音楽
特に印象に残るわけではないのですが、サントラとして良いのではないでしょうか。

・演技
ナヨナヨウダウダを演技するのは難しいとは思うのですが、ヒロインがちょっと不自然かなあ。演出のせいですかね。その他の登場人物は、普通に上手かと。

特に続編が決まっているわけでもないようなのですが、なかなか強気なエンディングで、びっくりしました。まずは一つの作品としてきちんとまとめてみせ、視聴者を楽しませてから、次に繋げることを考える方が良いように思うのですが。

2018年6月22日金曜日

スロウスタート、こみっくがーるず

スロウスタート   総合:☆☆☆
こみっくがーるず  総合:☆☆☆

実際には☆4なのですが、今までの感想全体を通して相対的に見た場合、苦渋の☆3。「ヤマノススメ」や「ゆるキャン△」とはやっぱり差をつけておきたくて。
両方とも現在進行形の4コマ漫画が原作です。原作は未読です。両方とも女子高校生4人がメインヒロインで少し百合要素が入ったギャグ系のアニメです。絵柄が似ていることもあり、一緒に取り上げました。
ちなみに「干物妹!うまるちゃんR」も一緒に取り上げてもいいくらい同じカテゴリーと思うのですが、1期を未視聴なので、とりあえず、やめておきました。自分の中では同じ☆3でも「こみっくがーるず」>「スロウスタート」>「干物妹!うまるちゃんR」でお気に入りです。内容はほぼ互角なのですが、まとめ方が「こみっくがーるず」が一番うまかったかな。

・ストーリー
「スロウスタート」
受験当日に法定伝染病に罹患し、止むを得ず高校受験浪人してしまった内向的な女の子が、地元から離れて入学した高校でできた友達に、どうしても浪人のことを言い出せない後ろめたさを引きずりながらも、楽しく生活していく様子を描いています。あまりに良い友人に囲まれたので、今の関係が壊れてしまうのではないかと恐れてしまうのは、仕方のないことだと思えます。いつ言い出すのだろう、言ったらどうなっちゃうのだろう、という危うさのバランスが、ヒロインに感情移入しやすくしていて、一歩間違えば単調になりそうな設定やストーリーなのに、飽きずに観られました。
「こみっくがーるず」
現役女子高生漫画家なのに、女子高生を描いた漫画を、リアリティがないと読者アンケートで酷評されたヒロイン。動物にはめっぽう好かれるのに、人に対してはコミ症の引きこもりで、かつ極度に自虐的な性格を心配した編集さんが、女子漫画家寮への入寮を勧めるところから始まる、漫画家女子高生たちの寮生活を描いた青春ドラマ。女性同士が同じ分野で活躍しようとすると、いろいろな嫌がらせ、足の引っ張り合いみたいなものがあるように邪推してしまう自分からすると、漫画家というもの含めて、これがリアルなのかノンリアルなのか判別がつかないのですが、まあ、そんなことはどうでも良いかな、と思える爽やかな友情物語をベースに、テンポの良いボケ・ツッコミがさえるアニメで、結構好きです。ヒロインの適度な自虐さが奏功しているのでしょうね。

・作画
「スロウスタート」
冒頭で「こみっくがーるず」と絵柄が似ているとしましたが、むしろ「うまるちゃん」に酷似している、と言えます。嫌いな感じではないし、それほどアクションがあるアニメでもないので、作画に気をとられる事がなく楽しめました。
「こみっくがーるず」
前者よりもさらに描き込まれている感じがしました。ギャグアニメとして自然でしたし、可愛らしくて良いと思います。

・音楽
両方共、アニメを盛り上げる感じで良かったです。特に「こみっくがーるず」はギャグの合間に見せるしんみりしたシーンを、オルゴール調の曲を効果的に使用して、よく演出しているなと思いました。それぞれのOP/ED もなかなか良いんじゃないでしょうか。

・演技
「スロウスタート」
今までは、それほど主役を張るような方々ではなかったのですが、「スロウスタート」の雰囲気にマッチしていて、良かったです。これからのご活躍も期待です。
「こみっくがーるず」
自虐的なヒロインをやりすぎ感のない演技で観せてくれた赤尾ひかるさん。同じヒロインの本渡楓さん・大西沙織さん(「刀使ノ巫女」のツートップ。そちらでも今すごい)・高橋李依さん、お三方も相変わらずサスガなのですが、経験豊富なこの3人のヒロインに赤尾ひかるさんもひけを取らなかったなと。遠藤綾さん、津田美波さん、上田麗奈さんも脇を固めています。

☆は辛めですが、好きな系統のアニメ2作品でした。

2018年6月19日火曜日

桜花忍法帖 バジリスク新章

桜花忍法帖 バジリスク新章 総合:☆☆☆

決して面白くないわけではないです。ただ、何回も見たいか、と問われると、一度で十分、と答えると思います。逆に、それだけインパクトのあるシナリオであるとも言えます。
あまり他にはない時代劇アニメ。原作は山田正紀の小説。未読です。山田風太郎の小説「甲賀忍法帖」の10年後を描いた作品で、「甲賀忍法帖」も漫画、アニメになっています。かなりよく特徴を捉えているとは思いますが「甲賀忍法帖」と原作者が違うので、テイストはやはり変わっています。設定が少し無理目なのと最後のどうしてそうできるのかの不思議を自分の中では解決できないこともあり、普通に面白い☆☆☆としました。

・ストーリー
「甲賀忍法帖」で、江戸幕府の命令で甲賀伊賀に別れて強制的に戦わされた10年後、甲賀伊賀の頭領の血を引く二人の新しい頭領と彼らを支える忍者たちが、倒幕を目指す新たな忍者軍団から江戸幕府を守ろうとするお話。「甲賀忍法帖」のエンディングを考えると血を引けたのはなぜ?江戸幕府に恨みを持っているはずなのにそれを守ろうとするのはなぜ?仕える忍者たちがそこまで頭領のために頑張れるのはなぜ?と疑問は尽きないのですが、それをスッキリさせてくれる解答は得られません。「甲賀忍法帖」ではより一層鮮明だったロミオとジュリエットタイプの恋物語も「桜花忍法帖」では希薄になっています。ひょっとすると原作の小説ではその辺がクリアされていて面白いのかもしれませんね。

・演出
ストーリーは納得できないことだらけなのですが、24話最後までそこそこ楽しんで観られたのは、少年漫画的な演出に徹しているためと思います。「キャプテン翼」や「ドカベン」に対して、本当のサッカー、野球ではない、と言っても仕方ないのと一緒かと。

・作画
ところどころ気になる点はありましたが、円盤買う上での障害になるようなことはないのではないでしょうか。男性キャラの描きわけがうまいですね。

・音楽
時代劇っぽくて良いんじゃないでしょうか。エンディングは演歌調の曲。水樹奈々さんが、持ち前の美声を聴かせて締めています。

・演技
ヒロインの水瀬いのりさんと、どうしても耳がいっちゃう早見沙織さん。ただ、全体的に声優さん皆さんがきっちり仕事しているな、さすが2クール物、力入っているな、と思いました。特に土師孝也さん、味がありましたね。

2018年6月18日月曜日

ウマ娘 プリティーダービー

ウマ娘 プリティーダービー 総合:☆☆☆

中間報告から星一つ落として☆3で。
競馬を萌え系にしてアニメ化する発想は良かったんだけど、結局、何がしたいのかわからないアニメでした。時代を超えたスターホースを集めているところから、ゲームのための前振りに過ぎなかったのかなと思えます。

・ストーリー
日本一のウマ娘を目指して上京した田舎ウマ娘がプリティーダービーの世界で活躍していくはずだった物語。親との約束、目標に向けたレースへの取り組み、憧れの人への思い、ライバルとの関係。どれもが中途半端に終わってしまいました。ヒロインの目標も、最終的には憧れの人と一緒に走ることにすり替わったし、その一緒に走るというクライマックスも、史実に中途半端に足を引っ張られているので、13話特別編ドリームレースとして無理やり付け足した感じの、なんとも歯切れの悪いエンディングになりました。何しろスペシャルウィークの母の父であるマルゼンスキーとドリームレースで走りますからねえ。まあ、牡馬を牝馬にしているところからリアルを求めちゃいけないのはわかっているつもりですが、時代まで交錯さてしまう、この脈略のなさは、ちょっといただけないなあ。ちゃんと一本の作品としてまとめきっているのならいいのですが、あれやこれやと詰め込みすぎで消化不良を起こしています。オールスター列伝にしたいなら、せめてオムニバス形式にすればよかったのに。あまり欲張りすぎないで、ヒロインの史実を基にした物語に絞ってくれれば、アニメとして成り立っていたのになあと思います。例えば、この作品のヒロインのスペシャルウィークなら、セイウンスカイやグラスワンダーとのライバル対決に注目して話を進めたほうが、もっとわかりやすくて面白い作品になりそうなのですが。

・演出
電話の受話器が馬の耳口に合わせて長いのがなかなかおかしかったです。トレーナーがうざくて、ウマ娘のヒロイン物語というより、トレーナーの独りよがり物語と化していて、せっかくの萌設定に水を差していました。

・作画
絵柄は可愛いし、安定しているし、動きもいいし、レースのスピード感も良いしで、アニメーションは観ていて気持ちよかったです。

・音楽
まあまあ、なかなか。

・演技
登場人物が多すぎてw みなさん、良かったと思います。

2018年6月16日土曜日

つうかあ

つうかあ  総合:☆☆☆

オリジナルテレビアニメ。

三宅島を舞台に高校サイドカーレーシングを題材にした、女子高生たちの青春物語。リアルっぽいけど、設定としては非現実的なお話です。ただ、この設定(サイドカーの二人一組の特徴)をうまく生かしていて、メインのヒロイン二人の恋模様をメインストリームに、ライバルチームそれぞれの二人の関係を、一組一組掘り下げていく形式をとっています。サイドカーレースはあくまで脇役で、本題はヒューマンドラマになります。ストーリーとしては特にとりたてて何ということもなく、可もなく不可もなく、淡々と観ることのできるアニメです。

作画も音楽も演技も普通で、普通に楽しめるアニメだと思います。

2018年6月14日木曜日

機動戦士ガンダム

機動戦士ガンダム 総合:☆☆☆☆☆

もうちょっとで現在放映中アニメが終わってくるので、それまでなんとか場つなぎをw
言わずと知れた、ロボットアニメの革命、金字塔。それまでのプロレス型のヒーロー物の概念までもをぶち壊した画期的なテレビ用アニメです。

・ストーリー
なにが、って、やっぱり、SF界の巨匠アイザック・アシモフ、アーサー・C・クラーク、ハインライン、らを連想するほどのリアリティあるSF設定。戦争なんだから、仲間が死ぬのが当たり前の世界観(なにせ、ガールフレンドがミナシゴになるところから始まるんだぜ)。内向的な少年が、思春期を経て、大人、いや、最高最強の存在へと成長していく物語。個性あふれる強大な敵(なにせ、敵の大将をタイトルにしたゲームが大ヒットなんだぜ)。萌え要素満載のタイプの違うヒロインたち(なにせ、ヌードだってあるんだぜ。やたら画期的だなw)。長編アニメなので、気安く通して観ることができないことだけが難点ですかね。え?映画3部作があるって?うーん。否定的です。ここまで書いてきたように、ガンダムの魅力は、戦争とその戦争に巻き込まれた普通の少年少女の成長物語、そしてその舞台となるリアリティある近未来のSF世界観にこそあると思っています。ところが、映画では、「人の革新」、ニュータイプの存在がクローズアップされすぎているのです。短い尺で、テーマを絞り、物語をまとめた制作陣のセンスはすごいと思うのですが、それでもテレビアニメ版のテーマの方に自分は惹かれます。映画版は違う作品だとさえ感じています。有名な勘が閃くピロリンという効果音も映画版からじゃなかったかな。

・演出・作画
語りだすとキリがなくなるこの作品。強いてあげれば「板野サーカス」につきましょう。現実を超える現実を見せてくれるこの演出、作画があったればこそのガンダムでしょう。

・音楽
特にシャアの登場、戦闘における緊迫感溢れる音楽が秀逸ですね。ジョーズのテーマ並みに印象的な楽曲ではないでしょうか。

・演技
伝説の声優さん方がずらずらと並んでいます。キャラ的にはセイラさん推し、なんですけど、やっぱり、フラウ・ボウの鵜飼るみ子さんの声が好きですね。ハヤト・コバヤシに、あの葡萄は酸っぱい、と言った時の演技が切なかったですね。

ガンダムをこんなに短くまとめちゃうなんて。。

2018年6月12日火曜日

きみの声をとどけたい vs 心が叫びたがってるんだ

きみの声をとどけたい  総合:☆☆☆
心が叫びたがってるんだ 総合:☆☆☆☆

両方ともアニメ映画。設定は同じく高校生の青春ストーリー。そして、言葉の力、重さ、をテーマにしているのが共通点。「きみの声をとどけたい(以下、きみ声)」は、「ことだま」を可視化しファンタジー的な表現を取り入れているのに対し、「心が叫びたがってるんだ(以下、ここさけ)」はあくまでリアルに徹して言葉の力を表現しています。

・ストーリー
「きみ声」
導かれるように出会ったミニFMラジオを通じ、友人が願う「大切な人に言葉を届けたい」を実現するために、仲間と協力してラジオ放送にチャレンジしていくお話。設定やあらすじはとても魅力的に感じました。
「ここさけ」
家族を崩壊させた自らの言葉をきっかけに自分自身にかけた呪いを、恋を含めた高校生の輪を通して解いていく物語。最初のうちは押見修造の漫画「志乃ちゃんは自分の名前が言えない」を思い出しました。

・演出
「きみ声」
導入が強引に思え、展開が青春グラフィティぽくて本来の目的を見失っている感じがし、結末は予定調和的。せっかくのプロットが台無しに思えます。
「ここさけ」
ちょっと悲しい展開。直球なストーリーではないので、そのぶん心に残る作品になったのではないでしょうか。

・作画
「きみ声」
絵柄は好き嫌いあると思いますが、自分は良いと思いました。同じマッドハウスの「宇宙よりも遠い場所(以下、よりもい)」と同じ調子です。ただ、アニメーションは、テレビアニメである「よりもい」の方が自然に感じられるという、ちょっと残念な映画です。
「ここさけ」
優秀だと思います。

・音楽
「ここさけ」の方が印象的かな。特にクライマックスからエンディングにかけての曲は、とても良いのではないでしょうか。自分はバッハ好きなので、バッハお得意の対位法的表現が大好きです。良い印象を持つ背景として、この好みが影響しているのかもしれないなと、お断りしておきます。

・演技
「きみ声」
ヒロインたちを当てている声優さんがたの経験値が足りないせいか、物語に集中できません。アンチ俳優な自分でさえ、これなら役者さんを使った方が良かったのではないかと思う位です。同じヒロインの一人、むしろ、主役になってもいいはずの役を三森すずこさんがあてていて、出てきた瞬間から役者の違いを見せてくれるのが救いでしょうか。なのにエンドロールでは、他のヒロインたちから一コマあけて登場します。何をか言わんや、です。同じ人たちでもいいので10年後にリメイクしたら、すごく良い映画になるかも。
「ここさけ」
(音楽教師を除き)さすがにみなさん上手いです。ヒロイン、ライバルヒロインには水瀬いのりさんと雨宮天さん。自分も登場人物の輪の中に入っていけます。現在放送中の「ダリフラ」「多田くん」でクールな役を演じてる何気にファンの石上静香さんが、ここでは明るい役を演じています。

「月がきれい」同様に「ここさけ」の☆を一つ減らしているのは、アニメという表現にこだわらなくてもよい作品だと思えるから、ですかね。

2018年6月9日土曜日

BEATLESS(2クール終了加筆)

BEATLESS  総合:☆☆☆

期待度が高かったこともあり、その落差に戸惑っています。この2クールでも終了せず、ファイナルステージにより完結する模様です。あくまで中間感想の域を出ませんが、ファイナルステージも見る気満々ですので、☆3に格上げしました。
理屈っぽさは好みです。この設定を描き切るには、確かに2クールでは足りなかったようです。小説が原作。原作は未読。ひょっとすると原作は面白いのかも。

・ストーリー
AIが人を超えた未来を描くSFアニメ。AIと人との関係を一貫したテーマとして、迫力あるアクションとSFらしい理屈っぽさを程よく掛け合わせたストーリーになっています。
AIにも個性があり、それぞれの行動原理をもとに、それぞれが生存をかけて、人と関わっていきます。据え置き型の超高度AIが多数を占めていた中、進化した女性型アンドロイドAI(作中ではhIEと呼んでいます)5体が、人間社会の中に解き放たれ、自由に行動を始めることで巻き起こる混乱と構築の物語です。
その中でも、人の形をしている事によって自然発生するアナログハックを人との信頼関係に利用し、単純にアナログハックすることで人を管理下に治めるのではなく、あくまで人の道具として、ゆらぎの部分の決定、未来の設計は人に委ね、人の描く未来を実現していく個体とその対象となった人間との物語です。ただ、人とAIの未来を構築するために一個人の未来図をベースとする手法は、AIとして賢いのでしょうか。AIが理想と思える人物を探し当てた結果のような流れですが、このAIは人全体を掌握する能力を持っているので、むしろ人全体の総意を参考にすべきとも思うのです。このあたりの人間的な振る舞いが今後の伏線になっているのかもしれません。
据え置き型含めその他のAIもそれぞれが描く未来の設計図に従い行動するのですが、それは、あくまで人間の意志や人間の世界を第一義に置いて構築されており、人とAIとの関係性の枠内に止まります。人と自壊的交戦に及ぶ赤いhIEも三鷹でテロを起こす緑のhIEもこの原則からは外れません。独立した自我を目覚めさせ、人と完全に対立し人の抹消を選択するAI(例えば、20世紀宇宙の旅のHAL9000やターミネータのスカイネット)のような道具を逸脱した存在にAIをさせないこと、これがこのアニメのSF世界観の根底をなしています。色々な意味で惑わされそうになりますが、女性型アンドロイドなのにアシモフのロボット三原則を逸脱してしまっているのは、AIというロボットの進化系ゆえと納得できますし、それでも三原則を少し拡大した枠組みにとどめて人との関係性重視をAIに課している点、かなり王道のSF作品で、この作品の魅力の一つです。
hIE側に視点を移すと、「わたしに心はありません」と言ってはいますが、いやいや、人の心を持って生まれてきたのに身体が機械だったことの悲劇を描いているようにみえます。未来を舞台にしたピノキオ物語。身体能力こそ、人を遥かに凌駕しているものの、hIEの思考と彼女らのとる行動は人のとる行動と変わらないのですから。
そこに、永遠のテーマ「異種族間恋愛」が追加されているのも、この作品の魅力にプラスされています。ただ、hIE 5体の中でもヒロインのhIEはブレードランナーのレプリカント・レイチェルやある意味その他のhIEに比べ、合理的思考が強すぎ、行動が打算によりなされているようにみえ、現段階までの話の中では、彼女の心のうちが読みきれないため、彼女を本当に「信頼」していいのかの不安定さを最終話でも謎として残し続けています。ヒロインは、人間的な心を持ちえたのか、心を持ったとしても、人を利用していることによる罪悪感を感じ始めているだけなのか、ピノキオ物語なのかそうでないのか、ファイナルステージで回収してくれることを期待しています。

・演出・作画・演技
ストーリーが傑作の域に達したとしてもなお、以下から、このアニメの総合的な感想自体は大きく変わらないと考えましたので、前回の公開では☆2とし、まだ中途段階ですが、感想をアップしてしまおう、という気持ちになりましたが、お詫びして☆3に訂正します。やはり、SF的ストーリーの魅力と、hIEの魅力には抗えませんでした。
− メインの人側の登場人物たちの演技が上手くない。5体のhIEの声優さんの演技は非常に良いので、人側の足の引っ張り方が残念至極でなりません。
− メインの人側の登場人物たちに感情移入ができません。思考がよく理解できないのです。むしろhIEに思考や行動に共感します。
− 裏切って、後悔して、全てを取り戻すためにリセットし簡単に関係修復。テンプレにしても分かり易すぎるような演出展開は、折角の骨太SF作品には似つかわしくないかと思います。
− 原画の不安定さも動画の不自然さも割と目立ちます。

設定、お話は好きな分野なので、アニメ本来の表現を損なわない形で底上げしてくれれば良かったのにな、と思います。

2018年6月8日金曜日

パプリカ vs 雲の向こう、約束の場所

パプリカ        総合:☆☆☆☆
雲の向こう、約束の場所 総合:☆☆☆☆

両方とも劇場用アニメ。
「パプリカ」は筒井康隆の小説が原作。原作未読。監督は今敏。
「雲の向こう、約束の場所(以下、雲の向こう)」は新海誠監督の長編オリジナルアニメ。
夢と現実の混濁、夢が現実の世界をコントロールするという観点から両作品を取り上げてみましたが、「パプリカ」は「ソードアート・オンライン」と並べた方が本当は良いと思っていました。ただ「ソードアート・オンライン」、長すぎて、どこら辺と並べるのが適切か、ちょっと悩んだので、今回は回避です。また、「パプリカ」の夢という仮想世界への干渉が現実へ大きな影響を与える設定を気に入るのなら、アニメらしい萌え要素は少ないけれど、実写映画の「マトリクス」「インセプション」も楽しめるかと思います。

・ストーリー
「パプリカ」
筒井康隆らしいとんでるSF。もっとも、原作とはだいぶ異なるようですが。
可愛いけどグロい、リアルなようでいて非現実的な異形のモノたちを過剰な描き込みにより表現した2次元映像に、独特のテンポの音楽を融合させて、実際の夢がもつ、突拍子もない、こんなことが起きても不思議じゃない、不条理な世界を際立たせるような表現をしています。この雰囲気のなか、「パプリカ」は、夢を操作する装置をめぐる複雑な登場人物の関係をミステリータッチに解き明かしていきます。展開も映像も不条理、これがこの作品独特の魅力になっていると感じました。
不条理から大団円を迎える物語で視聴後は爽やかさが残ります。
「雲の向こう」
新海誠監督らしい、リアリティ溢れる映像に、ちょっと幻想的な雰囲気をたたえた謎の塔。夢に閉じ込められた孤独な女の子を中心に、この特異な存在が、徐々に紐解かれていきます。展開は急なのですが、なぜか緩やかに穏やかに時間が過ぎていく感じが強く、最後の最後の最後にクライマックスがやってきます。
ヒロインは神様に祈ります。
「それだけを伝えることができれば、わたしは他にはなにもいりません。どうか、一瞬だけでも、この気持ちを」
この一言を聞くために観る映画です。
不条理から未来の暖かい予感につながる物語ですが、視聴後は一抹の寂しさが残ります。新海誠監督の真骨頂ですね。

・作画
両監督がそれぞれの特徴を生かしきっていると思います。

・音楽
「パプリカ」は独特の映像を生かすように独特の和風でポップな音楽が盛り上げており、「雲の向こう」は穏やかな世界観を少し寂しげで優しい音楽が支えています。

・演技
「パプリカ」はベテランでバッチリ。林原めぐみさん主演ということで買ったのもあるしw。「雲の向こう」は、役者で揃えていて、淡々とした雰囲気を維持するには良い面もあった気もしますが、それでも、ちゃんとキャスティングして、声優さんに任せた方が、より良かったんじゃないかなあ。(蛇足)演出のせいだけど、男の子二人のシンクロギャグ、あまり成功していないし。

2018年6月7日木曜日

バッカーノ!

バッカーノ!  総合:☆☆☆☆

現在進行形?のラノベが原作。原作未読。未読なのが良かったのか、アニメはそこそこ楽しめました。

・ストーリー
不死者が永遠に共闘したり殺しあったりする物語です、多分。

・演出
なかなかここまでクールでシュールな世界観を表現している作品は少ないのではないでしょうか。
狂気と正気、陰謀と策略、陰気と陽気、敵対と共闘、たくさんの登場人物がそれぞれの立場と目的に向かって錯綜する。その上、時系列の激しいシャッフル。付いて行くだけでも大変です。ただ、時系列のシャッフルは成功していて、「お、この物語、前に見たココに繋がってるのか」と自然に展開を再構築し直すことができ、それが、謎解きで答えを見つけた時と同様、ある種の快感を与えてくれます。混沌とした雰囲気、徐々に謎が解き明かされるミステリー風味を楽しむには良い作品との感想を持ちました。

・作画
優秀だと思います。

・音楽
普通だと思います。

・演技
1話の若本規夫と斎藤千和が強烈すぎて。

2018年6月6日水曜日

2018年4月スタートアニメ 最終寸評一覧

今回は4月スタートのアニメが、ほぼほぼクライマックスに突入してまいりました。寸評も交えて、最終中間感想文を。 (ハードディスクの空き容量が足りない。。)

 ☆☆☆☆☆

・ヒナまつり
いまだに、声に出しながら、笑って観ることができるので、☆5キープです。原作では、そのセリフはいらないかも、と思うところもきちんと整理されていて、良いんじゃないですかねー。ヒナ、アンズ、瞳、それぞれ可愛いけど、アンズの不幸より、降りかかった災いを物ともせず自然に自分の才覚でものにしちゃった瞳の姿が好き。

・踏切時間
1話目のインパクトがすごかったので☆5ですが。新鮮味は薄れてきましたね。ただ、以前、いしいひさいちが、4コマを起転結結にすると駄目押しの面白さが出る、と自分の作品の説明をしていましたが、踏切時間では起承承転、で終わるような場合があり、これが一つの面白みにつながっているようです。ええ?!それが結かよ、みたいなね。

・やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
ちょっとした言葉に、自分のような凡人にはわからないツッコミどころを見つけて、風刺する。その冴えた視点にざわざわします。こういう、いたたまれない雰囲気を感じたのは、「三月のライオン」以来でしょうか。
早見沙織さんの「あの花」と同じ系統の演技による声の当て方はいいですね。
東山奈央さんがキャラのまま、エンディングを歌っているのは流石にプロですね。
江口拓也さんのシニカルな演技もいいです。
悠木碧さんの妹も可愛いです。
2018年7月11日時点で、今更ながら、最も気に入っているアニメです。


 ☆☆☆☆

・フルメタル・パニック!
 機械の動きはすごい。宗介、そんなにのんびりしていていいのかと心配になるのが難点。

・ひそねとまそたん
絵柄もいいし、設定もいい。次話が気になる、てほどでもないけど、結構楽しめます。女の子が四つん這いで操縦するのが流行りなのかね。

・レイトンミステリー探偵社
チャオでの連載ですからね。誰にでも薦められますね。ミステリーとして、どうかと思う向きもあるかもしれませんが、人情系として観ると、なかなかどうして、面白い。花澤香菜さんが子供が見るであろうアニメに合う形で明るく元気で面白い演技を見せてくれていて素敵です。相も変わらず、流石ですな。槙原作曲のエンディングも花澤香菜さんが歌っていて、曲も槙原らしく、いい感じです。

・こみっくがーるず
女の子が漫画家として頑張ってるコメディ。軽い百合系。設定は違うけど、「スロウスタート」と似た雰囲気ですかね。軽妙で、王道のボケ・ツッコミも冴えてるし、お気に入りです。声優さんもヒロイン役赤尾ひかるさんに本渡楓さん・大西沙織さん(刀使ノ巫女のツートップですね。刀使ノ巫女でのお二人の演技はこの時期に来て輪をかけて凄まじいけど)・高橋李依さん他他が固めていて安心感があります。

・多田くんは恋をしない
ローマの休日を設定に使われたのなら、それはもう、面白くしなかったらむしろ罪でしょう。さあ、現代の日本を舞台にしたローマの休日。どう消化していくのか、最後が楽しみです。

・シュタインズ・ゲート ゼロ
絵は格段に良くなった。壮大なテーマなんだけど、今のところ割とだらだらしている感じ。前作を知らないときついのは残念かな。

・東京喰種:re
まあ、かっこいいんですけどね。やっぱ力を持っているのに全力出さないのが。。。鈴屋什造の冷静な無敵っぷりの方が好感度大。霧嶋董香ちゃんと金木が原作通り進むところに期待してw そこまでは観るかな。原作で心が歪んでぶっ飛んだ六月透が好きなので、どう扱われるか興味あり。

・ゴールデンカムイ
キャラのキャッチがうまいんですよね。また、ハードボイルドなところとコメディなところがうまく融合している。原作と違い、アイヌの薀蓄より、ストーリー重視の展開になっている。ただ、ちゃんと完結しないんだろうなあ。乞うご期待。対抗勢力の頭に大塚芳忠さんと中田譲治さん。若本規夫さん並みにあざとい二人ですが、それが良い方向に作用していると思います。

・実験品家族
音楽やパステル調の色彩が良い。ストーリーはもうちょっと観てみてから、という感じでしょうか。

・ウマ娘 プリティーダービー
そもそも牡馬を牝馬にしているところからリアルを求めてはいけないのだろうけど、サイレンススズカのストーリーは、これでいいのだろうか。トレーナーがウザすぐる。(降格寸前)


☆☆☆

・若おかみは小学生
小さい子供向けですからね、まあ、安心してみられます。

・LOST SONG
展開がシリアスになり、時系列をまぜこぜにする手法を取り始めていて、うまく収束するのか、ちょっと楽しみ。その無敵っぷりを、理不尽だった王子に最初から向けなかったのはなぜなんだ。質に取られていいなりになって犠牲を出すより、その力で抹殺しちまえよ。どうせ最後にそうするんだったら。

・ヲタクに恋は難しい
まあ、だらだらと。幼馴染が付き合うと、なんか、自然な感じに時が流れていくんですかね。

・銀河英雄伝説
流れる雰囲気はいいんだけど、ちょっと作戦に無理がありませんかね。例えば、冒頭の各個撃破による大勝がやたらすごい才能扱いされますが、これ、あまりに戦術の基本で(正直、大戦略系のゲームをやったことのある小学生だって気付くだろう)、そこに帝国の一人の将軍しか気づかず、成功した後、大英雄って、宇宙をまたにかける技術力を持った生物にしては、無能に過ぎませんかねえ。

・ありすorありす
だらだら観てます。

・神様はじめました(再)
ヒロイン役の三森すずこさんにつきますかね。これも永遠のテーマ「異種族間恋愛」コメディですね。まあ、最後が気になるので、最後までは観ます。

・アイドルマスター 
シンデレラガールズ劇場 だらだら観てます。

・魔法少女サイト
伊藤潤二セレクションを長編にした感じだな。これこそグロくした「まどマギ」ぽくないかね。ヒロインの優柔不断が、ここでも悲劇を招くので、あまり好きではない展開ですね。

・あっくんとカノジョ
男のツンデレw

・デビルズライン
永遠のテーマ「異種族間恋愛」。最後までは観る、んじゃないかな。

・ピアノの森
終わったら「4月は君の嘘」と比較します。なんだか、普通のピアノコンテスト参加物語にしか見えない。

・重神機パンドーラ(降格) 最初は理屈っぽくて好きだったんだけど、なんだかよくわからなくなってきたな。


 ☆☆

・ニル・アドミラリの天秤
・ラブライブ!サンシャイン!!
・あまんちゅ!~あどばんす~
・Cutie Honey Universe(坂本真綾なのにー)
・かくりよの宿飯
・宇宙戦艦ティラミス
・蒼天の拳
・魔法少女 俺
・鹿楓堂よついろ日和
・カードキャプターさくら クリアカード編
・ラストピリオド-終わりなき螺旋の物語–
・Butlers~千年百年物語~
・妖怪人間ベム
・ゲゲゲの鬼太郎
・奴隷区
・されど罪人は竜と踊る
・Lostorage conflated WIXOSS
・新幹線変形ロボ シンカリオン
・15歳 今日から同棲始めます
・甘い懲罰 ・美男高校地球防衛部
・フォーカード
・メジャーセカンド
・ペルソナ5
・SNSポリス
・Caligula-カリギュラ-(降格)
ペルソナといい、世界観にほんのちょっとのリアリティを感じることができれば、と思います。
・3D彼女 リアルガール(降格)
やっぱ原作では感じなかった主役のキモさに耐えきれません。
・メガロボクス(降格)
演出が古すぎないか。トレーナーの贋作が名前通りなんだけど。。 


☆ (いまのところ☆1は「王様ゲーム」のみです。)

2018年6月4日月曜日

APPLESEED vs イノセンス

APPLESEED  総合:☆☆☆☆
イノセンス   総合:☆☆☆☆

両方とも劇場アニメ。士郎正宗の漫画が原作。原作既刊完読。両方とも原作を下敷きにしていますが、設定を流用しているだけで、ほぼオリジナルアニメ、でしょう。

・ストーリー
「APPLESEED」は、AIとクローンにより管理された理想郷に住む人間同士の思想的な対立から武力衝突までを描いています。あわせて、美女と野獣系(つまり別種族同士)の恋愛物語を絡めている感じですかね。これ、永遠のテーマみたいですね。「イノセンス」より大衆的ではあるけれど、そのぶん、ストーリーそのものは面白いと思いました。
「イノセンス」は「攻殻機動隊」の続編を押井守監督独自の哲学と世界観で創作した物語。哲学するにはその前提はおかしくないかな(例えば、「動物は無意識」として人形理論を展開しているけれど、ボキャ貧なので思考するのは無理があるかもしれないものの、動物さんだって意識や意思はあるんじゃね?)と思うところもあり、まあ、ストーリーを楽しんだり、押井監督の若干押し付けがましい思想に共感するより、あくまでアニメの表現力や押井監督の持ち味「なんとなく哲学」な雰囲気を楽しめば良い映画、かと。そこが好きなんで☆4なんですけどね。

・作画
モーションキャプチャのフル3D(3Dライブアニメと呼ぶらしい)と3D+セルキャラ。まあ、すごいですね。この表現を見るだけでも観てみる価値はあるかと。

・音楽
これまた、両方いいですね。映像に溶け込んでいる度合いとしては「イノセンス」の方が効果的に感じました。

・演技
「イノセンス」
ジブリの鈴木プロデューサーが、少佐の声をジブリお得意の大物俳優(山口智子)起用に変えようとしたらしいのですが、出来上がっているイメージを変えるべきではないと出演を固辞した山口さん、素晴らしすぎます。プロデューサーは利益優先だからね、仕方ないね、困ったね。味が出る場合も確かにある、と思いますが、それでも、やはり、ちゃんと声で演じる訓練を重ねていて、実績を積んできている人に、やらせてあげてほしいです。結果的にはそうなったんだから、よしとしますが。
「APPLESEED」はその辺、ハナからちゃんとしたキャスティングのようです。ただ、続編でヒロインの相方の声が変わり、さすがの山ちゃんでも違和感ありました。再度言おう、山口さん、えらい、と。

2018年6月3日日曜日

いばらの王 King of Thorn

いばらの王 King of Thorn 総合:☆☆☆

劇場アニメです。漫画が原作。完結しています。原作は未読です。
なんの前知識もなくブルーレイで視聴。廉価版のハリウッド映画並みにお安かったので買ってみましたが、割と成功しました。原作を知っている人は観ない方が良いらしいです。☆4でも良いかも。

・ストーリー
「眠り姫(sleeping beauty)」の舞台を近未来にするとこうなりますってノリの作品です、なんの前知識もないと。バレエの「sleeping beauty」好きなこともありますが、そのままではなく、プラスして錯覚を利用し、二転三転するストーリに仕立て上げているので、自分は面白いなと感じました。

・作画
劇場版ですからね、よくないと困ります。

・音楽
普通ですかね。

・演技
ヒロインが良かったです。観た時にはそれほど気にしていなかったのですが、あとで、花澤香菜さんだと気づいて、納得しました。

評判はいまひとつですが、値段が安いときに買えば、それほど後悔しないんじゃないですかねえ。

2018年6月2日土曜日

魔法使いの嫁

魔法使いの嫁  総合:☆☆☆

現在進行形の漫画が原作。原作既刊完読。アニメは2クール放映されました。
ほぼ原作通り。良いタイミングでまとめているので、消化不良感はないです。

・ストーリー
特殊能力ゆえ、普通の社会からは食み出さざるを得なかった少女が、その特殊能力を受け入れてくれる世界に出会えたことで、不幸だと思い込んでいた過去を乗り越え、自分を取り戻す物語。生まれ育った国では妖怪や亡霊なるモノを新しい世界では精霊や妖精に置き換えて神秘的な雰囲気にしているのが特徴です。西洋ファンタジーが好きな人には合うのではないでしょうか。日ノ本古来の妖系でも「夏目友人帳」など、東洋独特の美しい雰囲気は出せると思いますけどね。

・演出
美しい世界、文字通りファンタジーを演出したかったのでしょうし、前半はある程度成功していますが、そもそも、メインストーリーがおどろおどろしいので、最後までこの雰囲気を維持するのは、少々無理があった気がします。妖精女王ティターニアの登場シーンなど冗長ですし、オベロンのお調子者っぷりもやり過ぎ、です。
ちょっとお気楽になる場面で、キャラがデフォルメ化されるのですが、これも、ヒロインにメインストーリーでは一貫してトーンを落とした演技をさせている関係から、露骨に調子を変えることもできず、苦しい感じです。

・作画
さすがに力入っているのでしょう。安定していますし、美しいシーンが多いです。

・音楽
サントラは良いです。1クールのEDは良かったです。自分には滅多にないことですが、2クールのOP/EDは飛ばして観ました。

・演技
演出的に、ヒロイン役の種崎敦美さんに無理させているな、と思いました。

2018年6月1日金曜日

結城友奈は勇者である 勇者の章

結城友奈は勇者である 勇者の章  総合:☆☆☆☆

オリジナルアニメ。全6話で、2時間半あれば見終われます。
「結城友奈は勇者である(以下ゆゆゆ)」の続編です。
万人受けはしなさそうな点、「勇者の章」だけで独立していない点、「鷲尾須美の章」や「ゆゆゆ」との比較を考慮して、☆4にしていますが、、☆5にしたくてうずうずです。

・ストーリー
前作「ゆゆゆ」含め「勇者であるシリーズ」は一貫して「自分ひとりが犠牲になれば良い、という考えを許さない」ことを観る読む人にメッセージとして伝えています。「勇者の章」では、このメッセージを強調したストーリー展開になっていて、究極の選択を強いられてもなお、犠牲を許さないために、少女たちは葛藤し、理想に向かって戦っていきます。人の心に踏み込んだストーリーなので、観続けるのは辛いのですが、「誰も悪くない」と心底言ってくれる仲間に囲まれているため、観ている方も救われます。

・演出
「ゆゆゆ」で2回、「勇者の章」で1回。勇者たちは勇者たちの間で大きな衝突をしています。「ゆゆゆ」では拳で語り合うみたいな、熱血モードだったのですが、「勇者の章」では言い争う形で、なんとか気持ちを伝えよう、考えを変えてもらおうとします。一歩間違えれば気持ちが離れてしまいかねない応酬ですが、全くそうはならないように見せてくれる演出は、手品のようです。それまでの、勇者同士の深い信頼関係を示すエピソードの積み上げによって、成された技なのでしょうね。

・作画
相変わらず、凄まじく良いわけではないのですが、円盤買っても良いんじゃないかなあ。

・音楽
相変わらず、サントラ買っても良いんじゃないかなあ。

・演技
6人のヒロインに照井春佳さん、三森すずこさん、花澤香菜さん、黒沢ともよさん、長妻樹里さん、そして、内山夕実さん。佐藤利奈さんも「わすゆ」に引き続き。少ない登場人物に絞ることが、キャラや物語を深める上で功を奏しているように思えます。今まで、あまり話題にしていませんでしたが、照井春佳さんは熱演だと思うんだけどなー。あと、内山夕実さんも「魔法科高校の劣等生」千葉エリカ役、「刀使ノ巫女」獅童真希役などなど、気になる声優さんなのですが、この、犬吠埼風役が、やっぱり、あたり役・はまり役かと。「ゆゆゆ」メンバーにプラスして花澤香菜さんがメインに加わったことは、「勇者の章」が単なる「ゆゆゆ」の続きにならずに変化していく上で、うまく作用したように思います。