まず、以下のリンクをご参照ください。このアニメのアマゾンに寄せられた低評価コメントです。アマゾンの低評価コメントにしては、パッケージングより内容に対するものが多くて参考になります。
https://www.amazon.co.jp/product-reviews/B011HWM97Q/ref=acr_search_hist_1?ie=UTF8&filterByStar=one_star&showViewpoints=0
「さよならの朝に約束の花をかざろう」などで否定的な意見に反論したりする自分ですが、ことこのアニメに対する否定的な意見には反論の余地はない、と思います。特に労働環境的な部分については全くもって、おっしゃる通りです。
アニメを観ていて気づいてはいましたが、自分はこの角度からの観点を気にしない立場で感想を書いていますので、以下、その点についてはご承知おきください。
オリジナルアニメ。2011年4月スタート。全26話。
全26話を長く感じさせずに引きつけてくれるストーリー展開、テレビアニメなのに映画並みの作画に敬意を払って☆5にしようかどうしようかかなり悩んだんですが、実写でもありの世界なのと、恋愛での悩み方が自分的に若干嗜好から外れる点、他のP.A.WORKSお仕事シリーズと比較すると作画の古さなどから、☆5相当の☆4に落ち着かせました。
岡田麿里さんがシリーズ構成と一部脚本も担当しています。もちろん、このアニメは岡田さん一人で作っているわけではないでしょうし、みんなで作り上げている総合芸術、だとは理解しているのですが、どうしても岡田カラーが、この作品にも滲み出ているなあ、と感じました。
・ストーリー
高校2年生の松前緒花。愛人の作った借金のため母親は愛人と夜逃げします。煽りをくって緒花が疎開した先は祖母の経営している石川県の湯乃鷺温泉旅館・喜翆荘でした。緒花は祖母から旅館を手伝うことを命じられ、仲居を始めますが、旅館の人たち、中でも、同い年の三人、アルバイト仲居・押水菜子、板前見習い・鶴来民子、そして、同じ温泉地にある老舗旅館の跡取り娘・和倉結名との交流を通じて、だんだんと湯乃鷺、喜翆荘が自分の居場所だと思うようになっていきます。
小柄だけど熱血漢、空気を読まず、気持ちをまっすぐに伝え、周りを席巻する緒花ですが、反面、奥手でもあり、大切な人との距離がつかめず、今の自分の居場所への愛着との間で、終始悩み続ける年頃の女の子の戸惑いと決心のお話です。
・演出
最近の仲居モノアニメっていうと「このはな綺譚」「若おかみは小学生」があります。これらの感想に対し、さらに☆を1つプラスしたくなる理由は、やっぱりこのアニメの演出の巧みさにあります。
このアニメでも当然、旅館ものアニメではお約束のようなイベントも起きるし、最後のイベントはあのお祭りでだよねー、というのはすぐに想像がつくのですが、そこかしこで起きる出来事が一筋縄ではいかないので、飽きることがないのです。
例えば、修学旅行先の大旅館のピンチを見過ごすことができず助けに入る。これだけなら、普通の展開だし、なんか青臭くなるものです。ところが、その大旅館の跡取り息子で番頭見習いをしているピンチを作った張本人が結名のフィアンセ。さらに実は結名は跡取り娘のくせにそもそも旅館の仕事なんてする気がない、という設定を絡めることで、話の展開を素直に予想させてはくれませんし、着地点も半歩だけ想定の範囲を超えてくる。こういう一本の紐が複数の糸を撚ることで作られているような話の進め方や、先をほんの少しだけ曲げて見せる所が、このアニメは見事だな、と思います。まあ、こんな点に岡田節を感じるのです。
同じような手法でキャラ設定もうまいですよね。またまた例えば、若旦那と経営コンサルタントのコンビ。イライラさせるキャラや演技でとってもウザいんですが、作品を単調にしないためには必要悪として許容できます。許容させるために、最後に、彼らって実はいい人だったんだ、とするだけならいかにも簡単なんですが、でもやっぱりダメじゃんってところを絡ませることで、悪人にも善人にも決めつけることができないキャラに落ち着くから、なんか仕方ないかな、と思わされるのです。
あと、旅館で働く人たちって滅私奉公な印象が強いのですが、この喜翆荘では、そんなにお客さんがいないせいか、割と働き方がゆるい感じで、自分の持っている常識の意表を突かれるところからスタートし、なんか緊迫感がないなあ、で始まります。でも実際はこんな感じでないと従業員はきっと大変ですよね。そんなことに想いを馳せているうちにリアルな感じがだんだんと深まっていく演出は、とてもスマートです。これにより冒頭の疎開する展開の突飛さが、いつの間にか消えています。
それと、ちょっとした所なんですが、10話で緒花が病気で倒れた時、入れ替わり立ち替わり見舞いに訪れる仲間たちが、テレビを点けたり消したりして出ていく時のそれぞれの持つ思いやりの表現なんか、なんてきめ細かい演出をするんだろうと感動します。
そして最後に、結末はきっちりしているのに、それがバッドなんだかハッピーなんだかはやっぱり観る人次第、という余韻の残し方も、とてもいいなあ、と思うのです。実際はわかりませんが、岡田節をこんなところにも感じます。
・作画
ダイナミックな動きも細かい所作も自然で丁寧に描かれているし、キャラも安定しています。しっかりした映画に比べると滑らかさ、背景などの描き込み度で若干落ちますが、十分劇場用並みのクオリティだと思います。
・音楽
ピアノで流れる落ち着いたサントラ曲がとても印象的でした。
・演技
みなさん良いし、ヒール役はヒールとしてやり遂げられていて尊敬します。でも、やはり、スイ、皐月、緒花の親子3代にはとても惹かれました。スイ・久保田民絵さんのザ・女将(若い頃は本田貴子さん)、皐月・本田貴子さんの声から滲み出る才色兼備(学生時代は伊藤かな恵さん)、緒花・伊藤かな恵さんの揺れ動きつつも強い意志の表現。素晴らしく感じました。()の時代によりずらして当てるキャスティングからも制作の演出の巧みさを感じます^^
戸松遥さんが、ちょっとウザめの女子高生やると抜群ですね^^ いつもと違った声色で、演技がかったしゃべりかたをしているのに不自然に感じさせない演技力は、このころからサスガです。
「結婚というのはね、本当の一人には絶対ならない、絶対にさせない、そういう約束なんだ」
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