2019年5月6日月曜日

Re: ゼロから始める異世界生活

Re: ゼロから始める異世界生活 総合:☆☆☆☆☆

ネット小説発祥の連載中ラノベ原作。
2016年4月スタート。全25話。
原作は読んでいないし、全く前知識のないアニメの感想です。
お子様は観てはいけない、はっきり大人向けのダークファンタジーです。
スプラッター描写は置いておいても、これ、小学生には理解できないと思います。
転移、タイムリープ、もう、お約束の設定てんこ盛りですが、ただそれだけのアニメではありません。

・ストーリー
学校にもいかず怠惰な生活を送っていた菜月昴。コンビニからの帰り道、見知らぬ世界に飛ばされた。そこで、自分の大事より他人の手助けを優先するエミリアに出会い、彼女を手伝おうとして、大掛かりなトラブルに巻き込まれ異世界で殺されてしまう。だが、彼が再度気付いた時、そこは異世界に飛ばされた最初の時刻、場所だった。彼は、前回の反省を踏まえ、やり直しを繰り返し、すべての問題を解決して、エミリアを助けた。しかし、自分の死に戻りを他人に話そうとすると、自身の消滅を予感させる魔の手が彼の心臓に伸びるため、彼の死んだ時の行為を誰にも伝えられず、周りの人に記憶として残ることはなかった。彼が自らの努力の虚しさを感じ始めた頃、恋敵の出現による嫉妬、前世界での怠惰、異世界での実績に対する傲慢、が噴出し、彼の精神は崩壊していくのだった。

・演出
これはすごい。ライトノベル、それもよくある転生ものかと思っていましたが、キリスト教の7つの大罪を真正面からテーマにし、ダークファンタジーとして表現しています。前半、通常のアニメの1クール分を使って、どちらかと言うと「このすば」のような雰囲気を漂わせながらこれからの展開のための布石をうちつつ、後半最初で、一気に平和な雰囲気を崩壊させ、ズシッと響かせます。これだけ人の善行、悪行をしっかり描き切った、いえ、観せ切れるアニメはなかなか見かけません。正直、途中、主人公の行いは観ていて相当気持ち悪くなります。それでも、観続けらるのは、その行為が必ずしも他人事とは思えないからです。さらに、ライバル(便宜上。実際にはライバルになっていない)ヒロイン・レム(cv.水瀬いのりさん)の存在は大きい。そして、敵はともかく主人公の周囲が、リアルと同じようにそれぞれの立場に立脚し、基本善性の人として、主人公とまっとうに、それでいて臆さず味方になったり対抗したりと渡り合う様が、観ているものに、人と人とのつながりにおいて、なにが問題なのかをしっかり考えさせる土台となっており、主人公にも、その相手にも、簡単には同調を強いない、加担させない、感情の複雑さを演出しきっています。ただし、たとえ対立する相手であっても、話せばわかる世界が舞台になっているので、観ていて決定的な絶望感を伴わないため、救われると同時に、それゆえに、主人公の崩壊に対する焦ったさを感じさせる演出は、秀逸です。
死に戻れる特性、タイムリープ物として、シュタゲ、僕たちがいない街などが直近であり、本来であれば、このアニメをオリジナリティ溢れる作品にするのは難しかったはずですが、このストーリー展開は、それらと設定を共有していてもなお、惹きつけられずにいられませんでした。死に戻りの諦観の表現は、他の作品を遥かに凌駕しています。
設定、脚本、音楽、作画、演技が総合芸術として、抜群でした。アニメならではの演出は、原作を昇華しきれているのではないかと感じました。
連載途中の原作をアニメ化することで、回収されていない大事なメインストイリームを含めたあれやこれやのエピソードがまだまだ残っています。それでも、この全25話で、しっかりエンディングを迎えたような気にさせてくれる演出も、素晴らしいなと思います。

・作画
2Dもしっかりしていますし、キャラもすごく可愛い上に安定しています。キャラが個性的なのもありますが、キャラの書き分けもできていますので、すぐに誰が誰だか理解できるようになります。表情の描き方が素晴らしく、アクションもバッチリです。原作に傷をつけまいとする気持ち、アニメ制作陣の気迫さえ感じます。

・音楽
サントラがすごく効果的にシーンを盛り上げています。OP/EDもまずまずかなと。

・演技
ペテルギウス・松岡禎丞さんの狂気の表現が凄まじいです。この一点だけでも原作をアニメ化して良かったのではないかと思えます。主人公の小林祐介さんも気合の入った演技で、逆に醜い姿の晒し方も作画共々一見の価値あり、でした。
エミリア・高橋李依さん、主人公との言い争いの場面に見入ってしまいました。レム・水瀬いのりさんが題名になっている名セリフを語るのですが、ここをターニングポイントとして、主人公が復活します。エミリアが彼の存在意義なら、レムはそれを知りながらも彼の支柱でありつづける強い覚悟と健気さがしっかり伝わる名演です。
その他の皆さんも良かったのですが(このフレーズ使い回し過ぎですがw )あと、強いてあげるなら、新井里美さんのベアトリスが彼女の性格を特徴付けるのに重要な語り口で支えていたなあ、と思ったことと、クルシュ役・井口裕香さんの滅多に聞けない凛々しい役回りが印象的でした。
スーパーサブ・相馬康一さん、ここにもw

セーブポイントのように都合の良い時刻に復活する若干のご都合設定、胸糞の悪くなる展開。これらにより☆5には本当はしづらいのですが、演出で書いた通り、ここはかろうじて受け入れられます。この気持ち悪さを含めても、全体的には非の打ち所がなかったと考え☆5です。

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