2018年11月3日土曜日

true tears

true tears 総合:☆☆☆☆☆

ゲームが原作と冒頭に出ますが、題名で示される「真実の涙」をテーマにしていること以外に共通点がない、オリジナルテレビアニメ、と言って良い作品だと思います。
2008年1月スタート。全13話。ブルーレイでは、13話目のエンディング後に3分ほどの後日譚が追加されています。

・ストーリー
両親を亡くして同居中の幼馴染・比呂美を意識していた高校一年生の眞一郎。そんな彼の前に、同じ高校で変わり者と評判の乃絵が木から降ってくる。この波紋に、その場しのぎで比呂美がついた些細な嘘が共鳴し、眞一郎と彼の周りの人たちの、今まで押し殺していた想いが弾けだす。

・演出
先を読ませない演出は、さすが岡田麿里さんのシリーズ構成・脚本(は他の人も参加)、といったところでしょうか。最後の海辺での乃絵と眞一郎の会話。ストレートな言葉を使ってなくても、はっきりと視聴者に伝わってくる眞一郎の気持ち。西尾維新「化物語」や渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」の言葉遊びに近い洒脱な台詞回しも魅力的ですが、女性ならではの綺麗で繊細で想いを奥に込めた会話で織りなす物語も、シンプルに良いな、と思います。
微妙に揺れ動く人間関係を、リアリティある行き違いで表現する手腕は卓越しています。あの吉川英治の名作「宮本武蔵」でさえ、作中の武蔵とお通のすれ違いは、やりすぎだろうおい、と感じるし、大抵の作品では、すれ違いの演出にハラハラよりもイライラするものですが、そうならないスレスレの行き違いを、次々にストーリーに織り込んで、奥行きのあるヒューマンドラマにして観せてくれます。
また、登場人物たち全員が、完璧な性格とはとても言えないのですが、だからって嫌いになるほど、酷い人達というわけでもなく、ごくごく普通の人として共感できる人物の描き方も、岡田麿里さんは際立っていると思います。引き合いに出しちゃってすみませんが、最近よく観ている鴨志田一さんの描く登場人物に対しては、ついつい逝って良しと言いたくなってしまうのとは大違いです。
ただ、同じ岡田麿里さん脚本の「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」「心が叫びたがってるんだ」は多少のファンタジー要素があったのに比べ、「true tears」は100%完全リアル設定。アニメによる表現手段が絶対必要だったかと言われると、そんなことはなさそう、という観点から、最後まで☆4にするかどうかで悩みました。最後は「月がきれい」とどっちが気に入ったかと考えてみて、こっちかなあと。で僅差の☆5です。
「あの花」も「ここさけ」も完全無欠なハッピーエンド、とは違うと思っていて、この捻り方が、自分には合っているため、岡田麿里さんの絡んでいる作品は、おしなべて好印象の感想になっていると思います。余韻が普通とは違うんです。新海誠監督の初期の頃にも同じような余韻があるため好んで観ていました。

・作画
テレビアニメとしてのクオリティは相当高いです。
ブルーレイにしては画質がちょっとだけ眠いです。10年前のものを特にリマスターしたりしていないから、かもしれません。
演出でもあるんですが、風景の伏線の張り方と回収が、あざとく感じることなく良かったです。最後の最後に空に散るきらめきのみで見せる乃絵の感情の回収も意表を突かれて見事でした。

・音楽
普通に良いかな、と思います。

・演技
この微妙な感情表現を高垣彩陽さん、名塚佳織さん、井口裕香さんが好演しています。

設定も登場人物の背景も全然違うんだけど、雰囲気で冬目景の漫画「イエスタデイをうたって」を思い出させました。

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