この世界の片隅に 総合:☆☆☆☆
漫画「夕凪の街 桜の国」で広島の原爆を扱ったこうの史代さん。原爆以外の戦争による犠牲を描いたのが漫画「この世界の片隅に」。広島から呉にお嫁に行った「すず」さんの日常を描いています。戦争が日常だった時代の風化しかけている風景が、バイオレンス表現なく、暴力的に描写されている秀作です。
劇場アニメ化され2016年に公開されました。
・ストーリー
絵は上手だけれど、裁縫が苦手だったり、あれやこれやとボケをかます「すず」さんですが、幼い頃に出会った男の子のところに、そうとは知らずにお嫁に行きます。原作では、お見合で夫婦になることについて、もう少し突っ込んだ表現があったのですが、映画では、すずさんだけではなく、いろいろな人の視点を所々に差し込むことで、戦時を暮らす人々の日常をリアルに語っています。
・演出
という感じに、微妙に監督目線でストーリーがアレンジされていますが、高射砲の色彩化以外は、やらずもがな。リンとの関係、小姑との確執と和解などが、ちょっとそっけなく終わってしまった感じがします。
・作画
こうの史代さん独特の漫画表現を再現とまではいきませんが、キャラクターが自然な動作をしていて良いんじゃないでしょうか。
・音楽
舞台装置として必要にして十分。
・演技
のんさん、善戦しているとは思うのですが、本職がやったらもっと良かったろうに、と思います。通常まったりしているヒロインが突然激昂する場面を声だけで演じ切らせたら、例えば花澤香菜さん(だけではないのですが)にはどうしても劣る様に感じます。
下記の様な、こうの史代さんの少し違った視点からの感情表現は、この作品でも健在です。
「夕凪の街 桜の国」で原爆の後遺症により死にゆく皆実が思います。
「嬉しい?
10年経ったけど原爆を落とした人はわたしを見て
『やった!またひとり殺せた』
とちゃんと思ってくれとる?」
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