2021年2月9日火曜日

終末のイゼッタ

終末のイゼッタ  総合:☆☆☆☆

オリジナルアニメ。
2016年10月スタート。全12話 30分枠

・ストーリー
制空権と戦車を中心とした陸上機甲軍との連携で、周辺諸国を圧倒し、領土の拡大を始めたゲルマニア帝国。ヨーロッパ全土に覇権を広げようとしていた帝国は、その矛先を、交通の要衝・アルプスに囲まれた小国エイルシュタット公国に向け始めていた。
容体の悪い公王に代わり次期・公王をとなることを期待されているフィーネ公女は、ブリタニア王国に援軍を求めるため、王国の要人と密会するのだが、その場を帝国軍に急襲され、囚われてしまう。
帝国の首都に移送される飛行機には棺が一緒に運ばれている。機内でフィーネと帝国軍人が言い争っている様子を虚ろな状態で見つめていた棺の中の少女は、かつて、フィーネに命を助けられた魔女・イゼッタだった。フィーネの危機に、イゼッタは棺を破り、魔力を使ってフィーネと共に帝国軍から脱出する。
そしてイゼッタは、フィーネの恩に報いるため、エイルシュタット公国のためにゲルマニア帝国との戦渦に飛び込んでいく。

このアニメの魅力を、ストーリーのネタバレなく伝えることは難しいかと^^;
以下、ご注意くださいm(_ _)m

最初の3話くらいまでに、しっかり伏線として伝わってくるのですが、強大な力を持つものがポツンと世界に置かれた場合の顛末について、12話かけてまとめられています。
第二次世界大戦を舞台にしたジャンヌ・ダルクの物語のようです。
なので、神に選ばれたものが最初はもてはやされるものの、最後には人社会の中で異端として排斥されるようになる展開が予見できるのですが、さすがにアニメで、そこまでドロドロしたエンターテイメントにはできなかったのでしょう。それに、もしもそうすると、まんま、ジャンヌ・ダルクになってしまいます。
伏線の回収として、期待と異なる着地をさせたことで、賛否の分かれる所だとは思いますが、かつて同じ境遇に置かれ、ジャンヌとなった魔女を登場させ、イゼッタはヒールに墜とさずに終わらせたのは、なかなか上手い演出だったなと思います。
ただし、問題がないわけではありません。全体としての流れはいいのですが、この流れを実現するための方法に難があると感じました。つまり、このクライマックスを迎えるには、あまりに壮大な能力を必要とするように思われ、現実的には無理じゃなくね?、と思えるのです。御都合主義、と言うか、推理小説で言えば、禁断のトリックを使ってるような、気がしてしまうのです。そんなことにはならなかったのですが、宇宙の理を書き換えるほどの魔力を蓄積させた理由について、まどマギのストーリーの中で語られていなかった場合の、鹿目まどかのようです。

・演出
BADかHAPPYか、最後まで予断を許さず、微妙に期待を裏切り続ける演出はとてもよかったです。単なる戦記モノと違い、単純に、敵国に勝利すれば良いわけではない設定の賜物でしょう。
ただ自分として残念だったなあと思うところは、◯◯を使い切ったとは言え〇〇が生き残るのは、まあ特に矛盾がないので、受け入れても良いのですが、あの人を生き延びさせた意味がわかりません。これら、後日談に、もう少し練りこんだ物語を見せてくれれば、さらに長い間余韻を楽しめたんじゃないかな、と感じます。

・作画
キャラクター原案が勇者であるシリーズのBUNBUNさんで、引きの構図でも崩れない可愛く整ったキャラクターが良いです。映像はテレビアニメとして十分です。

・音楽
劇伴として悪目立ちせず、よかったです。個人的には、フィーネとブリタニア王国の要人との密会場所であったオペラの劇場での演目が、モーツァルト「魔笛」夜の女王のアリアってのがよかったです。参考にしたのは、夜の女王ディアナ・ダムラウでコリン・デービス指揮コベントガーデン。だと思われます。もちろん、このアニメの音楽に使われているものとは別物で、あくまで衣装が似ているという意味です。それにしてもアニメの劇伴に、もっとクラシック使っていいと思うんですけどねえ。

・演技
演技陣に穴はないですね。音声だけ聞いていても楽しめると思います。
とは言え、お一人だけ。本当に早見沙織さんって、そんなに声を変えるわけではないけど、絵柄や役柄、表情にピッタリ合わせてきますね。題名ではイゼッタが主役みたいですが、フィーネが主役に思えてきます。

ファンタジー戦記モノはあまり得意じゃないのですが、モンスターやエルフ・ドワーフのような異種族が出てこないことと、実世界の歴史を下敷きにしていると、割とすんなり受け入れられるようです。
蛇足ですが、棺のようなものの中からの登場で、自分的最も印象的な動画は、ゲーム「ゼノサーガ」のKOS-MOSの登場シーンです。
蛇足の蛇足。この時の作曲者は光田康典さん。ゼノサーガ2以降は梶浦由記さん。あまりの落差にがっかりしたので、自分には梶浦節へのアレルギーがあるのですw

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